出産リスクの高い前置胎盤について!妊娠初期に診断されたら?

出産リスクの高い前置胎盤について!妊娠初期に診断されたら?




妊娠中にはさまざまなトラブルが発生しますが、その中の一つに「前置胎盤(ぜんちたいばん)」という病態があります。

前置胎盤になると出産リスクが高まり、ママと赤ちゃんに危険が及ぶ可能性があります。しかし、妊娠初期に前置胎盤と診断された場合には、自然と治るケースも多いです。

そこで今回は、

・前置胎盤は危険な状態なの?
・どうして前置胎盤になるの?
・妊娠初期に前置胎盤と診断されたけど治るの?

といった方に、前置胎盤とはどんな病態なのか、その症状や診断が確定したときの出産の流れなどを詳しくご説明します。

胎盤は赤ちゃんにとっての命綱

胎盤は赤ちゃんにとっての命綱

前置胎盤は、妊娠すると形成される胎盤の「形成位置」が問題となる病態です。胎盤は赤ちゃんとママをお腹の中でつなぐ唯一の命綱として、とても重要な役割を担っています。

胎盤の形成と役割

ママと赤ちゃんを繋ぐ胎盤は、受精卵が子宮に着床した部分に形成されます。この状態が妊娠の成立です。着床すると子宮の一部が分厚くなって変形していき、胎盤の形成は妊娠14〜16週でほぼ完成します。

妊娠期間中赤ちゃんは、胎盤を通してママから酸素・栄養・水分など成長に必要な、エネルギーを受け取ります。逆に老廃物などの不要な物質は、胎盤を通して赤ちゃんからママに送られ、母体が処理を行います。

役割を終えた胎盤は?

胎盤は赤ちゃんが産まれた後、30分ほどすると子宮から剥がれ落ち、体外に排出されその役目を終えます。胎盤はいわゆるへその緒ですが、切り落としたものは記念に持ち帰るママもいます。

胎盤は直径20センチ、重量500〜600グラムほどもあり、ちょっとした大きさです。

前置胎盤とはどんな状態?

前置胎盤とはどんな状態

通常ならば受精卵は、子宮の奥に着床し胎盤を形成します。赤ちゃんは、子宮上部の着床した部分でできあがる胎盤(へその緒)から、ぶら下がるような形でママと繋がるのが普通です。

ところが、この「前置胎盤(ぜんちたいばん)」の状態では、胎盤が通常よりも低い位置に着床して形成してしまい、赤ちゃんが子宮口を塞いでしまうために、出産時にさまざまなトラブルが発生するリスクを伴うことになります。

妊婦さん(母体)への影響

前置胎盤は、妊娠中に大出血する恐れがあります。胎盤が形成されている子宮頸部は、妊娠後期に入ると伸びていくのですが、この箇所に胎盤が形成されていると、子宮壁と胎盤が接しているところがずれて出血が起こります。

また、前置胎盤は赤ちゃんが子宮口を塞いでいる状態なので、経膣分娩が難しく帝王切開でのお産しか娩出方法がありません

帝王切開は切開手術ですので、大量出血を伴うお産となる可能性があり、ハイリスクな出産となります。

正常に胎盤が形成されていれば、赤ちゃんが産まれた後、30分ほどで胎盤も体外に排出されます。

しかし、前置胎盤の場合、子宮内膜が薄い部分に着床して胎盤が形成されるため、子宮の筋肉や子宮頸部本体まで胎盤が根付いてしまう可能性があります。

癒着胎盤

胎盤の根がしっかり張られてしまうと、出産後に胎盤が排出されなくなってしまいます。胎盤が自然に排出しない場合は人工的に剥離する必要があり、母体はさらに出血することになります。

このような状態を「癒着胎盤」と呼びますが、癒着胎盤の一番のリスクは、人工剥離の際に子宮からの出血がおさまらない場合、子宮の全摘出の可能性が出ることです。

子宮を摘出してしまうと、第二子の妊娠ができません。また、一連の大出血によりショック死するケースもあります。

前置胎盤で癒着胎盤を合併する可能性は、0.04%と低いですが、前置胎盤による子宮の摘出率は、3.5%〜4.5%となっているため軽視はできません。

赤ちゃんへの影響

前置胎盤は、妊婦さんだけでなく赤ちゃんにとってもリスクの高い妊娠です。まず、お腹でママとの唯一の繋がりである胎盤箇所から大量に出血するため、低酸素状態となり命の危険が伴います。

また、本来なら子宮からぶら下がるような形で成長するはずなので、出産時には頭から骨盤内に下りていくことになりますが、前置胎盤の場合、胎盤が体外に出るときの邪魔になり、逆子や横位での出産となる可能性が高くなります。

母体の出血量が多いときには、まだ成長過程であっても、緊急で帝王切開にて娩出されるため、早産の未熟児で生まれるケースもあります。

前置胎盤の症状

前置胎盤の症状

前置胎盤では、その初期症状として妊娠後期(妊娠28週以降)の出血が特徴です。子宮が収縮することにより、胎盤がずれてその箇所の血管が切れるために出血が起こります。

この出血は「予告出血・警告出血」と呼ばれる少量の出血で自然止血しますが、何度も繰り返して起こります。その後妊娠週数が進むにつれて少量だった出血が増えて行き、大量出血を引き起こします。

腹痛などの症状がないため、妊娠後期に少量でも不正出血があるときには、病院に連絡しましょう。臨月近くになり大量出血が起これば、緊急の娩出手術となる可能性もあります。

前置胎盤になりやすいタイプとは?

前置胎盤になりやすいタイプとは

出産リスクの高い前置胎盤ですが、残念ながら妊娠前や妊娠初期のうちに対応できることはありません。また、前置胎盤が起こる原因もまだ解明されていないのです。

ただ前置胎盤になりやすいとされているタイプや傾向はあるので、以下の項目に当てはまる方や心当たりのある方は、今後可能性があると考えておくことも必要です。

以前も前置胎盤になったことがある

以前の妊娠でも前置胎盤になった経験のある方は、次の妊娠でも前置胎盤になる可能性が高いです。

前置胎盤の経験がない女性と比べると、その確率は約8倍なので、一度経験したことがある方は注意しましょう。

前回の出産が帝王切開だった場合

前回の妊娠が帝王切開での娩出だった方は、前置胎盤になるリスクが高くなります。帝王切開した回数が多くなるほど可能性が高くなり、3回以上帝王切開の経験がある方は、その確率が4.1と非常に高くなっています。

また、「癒着胎盤」が起こる可能性も高いため、経産婦の方は特に注意が必要です。

子宮内膜に傷がある場合

子宮内膜が傷つく原因としては流産や中絶、子宮筋腫摘出などの有無が関係します。

以前に子宮の手術を受けたことがある場合には、その処置により子宮内部に傷がついていることから、正常な胎盤形成が行われない要因となることもあります。

多胎妊娠の場合

多胎妊娠では、胎盤の形成数が通常よりも多くなるので、その面性の問題によって胎盤が子宮下部に形成されることがあります。

高齢出産の場合

高齢出産も前置胎盤の確率が高くなります。35歳未満の方と比べると35歳以上では4.7倍、40歳以上で9倍になるとされています。

喫煙の習慣がある

喫煙は妊娠には悪影響といわれていますが、前置胎盤の場合、喫煙によって子宮に血流障害が起こり、正常な状態の着床ができなくなります。

喫煙習慣のある方と習慣のない方を比較すると、その発生頻度は約1.5倍となることがわかっています。できれば副流煙も避けた方が望ましいので、家族に喫煙者がいる場合は、出産までは禁煙を協力して貰いましょう。

妊娠初期の診断には空振りが多い?

妊娠初期の診断には空振りが多い

前置胎盤になると、出産リスクが高まるとお伝えしましたが、妊娠初期に「前置胎盤である」と診断されても、実際に妊娠週数が進むと前置胎盤ではなくなるケースが多くあります。

実は前置胎盤の確定診断は、妊娠31週の末までに行われ、確定するのは妊娠32週以降とかなり後のことです。

妊娠初期のエコー写真では子宮口に胎盤が形成されているように見えても、妊娠週数が進み赤ちゃんが成長するにつれ子宮頸部が伸びることで、胎盤位置がずれ自然に胎盤位置が正常になる可能性が高いのです。

ですので、妊娠20週前後では、前置胎盤かどうか正確にはわからない、というのが現状です。

妊娠初期段階での前置胎盤の診断は、空振りに終わることがあり、可能性があることを伝えられても自然に治るケースが多いので、心配しすぎないようにしましょう。

妊娠週数別の確率

妊娠初期段階で、前置胎盤と診断された妊婦さんの約90%が、妊娠後期には胎盤位置が自然と治っているとの結果もあるほど、妊娠20週前後の診断は不確定なものです。

「前置胎盤」であると診断された妊婦さんが、妊娠後期まで前置胎盤だった確率を妊娠週別にした結果があります。妊娠後期になるほど確定率が高まりますが、妊娠初期ではその数値が低くなっています。

妊娠15~19週:12%
妊娠20~23週:34%
妊娠24~27週:49%
妊娠28~31週:62%
妊娠32~35週:73%

エコー写真だけでは、前置胎盤かどうかを見分けることは難しく、多くのケースが自然と治っています。最近は妊娠初期に前置胎盤と診断したケースが、結果的に前置胎盤だったかどうかの研究も進んでいます。

妊婦さんは前置胎盤だと診断されたときには「どんなリスクがあるのか」「どんな症状があらわれるのか」を知っておき、心構えをしておくことが大切です。もし前置胎盤だったときには、管理入院や絶対安静となります。

前置胎盤と確定診断を受けたら

前置胎盤と確定診断を受けたら

前置胎盤の確定診断を受けた場合には、妊婦さんが備える必要なことが出てきます。

転院の可能性

前置胎盤が確定と診断されると、個人院や助産院では処置や対処が難しいケースが出てくるため、麻酔科のある総合病院や赤ちゃんが早産となっても対応できるNICU(新生児集中治療室)のある大きな病院への転院が必要です。

病院での入院管理

確定診断後は、妊娠32週〜34週までに入院管理となることが多く、入院中は絶対安静です。出血が多いときには子宮収縮抑制剤を投与して大量出血を防ぎます。

もし出血がなければ外来管理となりますが、いつでも緊急入院ができるように準備はしておきましょう。

万が一に備えての自己貯血

前置胎盤では帝王切開で娩出することが決定しているので、出血がなければ予定日に切開手術を行います。その際に大量出血の危険性があるため、あらかじめ輸血用に自分の血液を採取しておきます。

これが入院期間中に行う「自己貯血」です。胎盤癒着の可能性もあるため、妊婦さんは、大量出血の場合に備えなければなりません。娩出には事前に、十分な輸血準備を行ってから臨みます。

出血したら緊急手術のケースもある

帝王切開は妊娠37週の末までに行うのが通例ですが、万が一それよりも前に大量出血し、母子の命に危険が及ぶ場合には緊急手術となります。

早産となる場合赤ちゃんが未熟児で生まれることが多いので、出産後はNICU(新生児集中治療室)で処置が必要になることもあります。

妊婦さんは胎盤癒着の可能性もあるため、赤ちゃんを娩出した後も気が抜けません。胎盤の癒着が深く人工的に剥離ができないケースもあります。

抗がん剤で胎盤を収縮させる方法もありますが、止血自体ができない場合には子宮を全摘出する必要があります。

帝王切開でも赤ちゃんは元気に育つ

帝王切開でも赤ちゃんは元気に育つ

前置胎盤は胎盤異常の一種で、正常な分娩はできませんが、絶対安静で医師の指示を守れば帝王切開でも元気な赤ちゃんを産めます。

前置胎盤になりやすいタイプや、初産でも前置胎盤になる可能性もありますが、他の疾患で帝王切開になるケースや、疾患がなくても最終的に帝王切開での分娩になる方もいます。

前置胎盤の診断が確定しても、正産期の妊娠37週近くまでお腹の中で赤ちゃんが育てば、出産には問題ありません。

無理なく安静に過ごすことで、お腹の赤ちゃんは元気に育ち生まれてきてくれるので、過度に落ち込んだりせずに出産に向けて気持ちを落ち着けましょう。

前置胎盤で安静といわれたときの過ごし方

前置胎盤で安静といわれたときの過ごし方

前置胎盤でも出血していない場合には、入院管理ではなく自宅管理となることもあります。では、自宅安静のときにはどのように過ごしたら良いのでしょうか。

自宅安静の場合、まず運動は控えましょう。運動することで子宮が収縮し、出血を引き起こす可能性が高くなるからです。

何をしてはいけなくて、何ならしても良いのかは一概にはいえず、その線引きや判断は難しいですが、安静の場合、可能であれば、家事も家族や旦那さんにお願いできる環境がベストです。

まったく何もせず、寝たきりに近い状態を目標にすることもありますが、日常の必要最低限のこと以外では、なるべく体を横にようにできる努力をしましょう。

前置胎盤は出血した時点で、入院し医師の管理下での安静となります。自宅安静といわれたときは、入院するほどの危険性がまだないということなので「予防的な安静」と捉えても構いません。

しかし、いつ出血してもおかしくない状況には変わりないので、正産期までお腹の中で赤ちゃんが育つように、無理せずに過ごすことが重要です。

前置胎盤と診断されると出血などの不安も大きいですが、ストレスなく過ごすことが一番です。病院としっかり連携を取っていれば、いざというときにも対処が早いので、医師にこまめに相談しておくと安心ですね。

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