産後に感じる陰部の違和感の原因

産後に感じる陰部の違和感の原因は?子宮下垂・子宮脱かも



出産を終えた体はとってもデリケートな状態です。

産後は陰部に違和感があるという人も多いはず。妊娠に伴って体が変化したせいとわかってはいるものの、出産後は妊娠中とはまた違う不安や心配があります。

ただ、下腹部や陰部に明らかな違和感が続くとき、それはもしかすると子宮下垂や子宮脱かもしれません。

そこで今回は、

・子宮下垂、子宮脱とは?
・子宮下垂、子宮脱の原因は?
・産後に陰部の違和感があったら?

といった方に、産後に陰部の違和感を生じる原因や、子宮下垂・子宮脱について詳しくご紹介します。

産後は陰部に違和感を覚えやすい

妊娠中のおりものの変化

産後に感じる陰部の違和感で一番多く悩みがあるのは、会陰切開・裂傷の縫合部の痛みではないでしょうか。

分娩時に急遽切開することになったり、自然に裂傷が起きたりすることもあるので、産後ヶ月ほどは、陰部に違和感を覚える人は多くいます。

排便時にいきむと、また裂けてしまうのではないかという不安で、ついつい我慢してしまい便秘になる人もいるほど。

縫った箇所は、排便などの日常生活の行動ではまず裂けることはありませんので、どうしても気になって排便できなくなるようであれば、便を柔らかくする薬をもらうなど一度病院で相談してみましょう。

このように、産後は陰部に違和感が残りやすい状態ですが、今回紹介する子宮下垂・子宮脱は、症状がわかりにくいこともあり、放置すると手術が必要になるケースもありますので、陰部や下腹部の違和感が続くときは注意が必要です。

子宮下垂・子宮脱とは

子宮下垂・子宮脱は、簡単にいうと子宮が膣内に下がってきたり、膣外にはみ出たりしまう症気です。

自転車に乗るときにサドルにあたる部分を、骨盤底といいますが、この骨盤底を取り巻くさまざまな筋肉のことを、骨盤底筋群といいます。

骨盤底筋は子宮や膀胱など、骨盤内臓器を下から支えていますが、この筋肉が弱くなると子宮が下がってくることがあります。

その状態を「子宮下垂」と呼び、下がった子宮が腟口から顔をのぞかせる状態を「子宮脱」といいます。

特に産後は、骨盤底筋が緩みやすくなっていますので、これらの状態になりやすくなります。

子宮下垂は、本来あるべき位置に子宮がないものの、膣内にはとどまってはいるので、症状が軽い場合は自覚症状がないことも。

育児が始まって日常生活を送り出してから、ようやく陰部に違和感を覚えるケースも多くあります。

子宮脱の場合は、子宮下垂が進行して、膣内から子宮がはみ出てしまった状態です。

子宮だけでなく、子宮の前側にある膀胱と、後ろ側にある直腸が一緒に下がってきて、膣外に出てしまう「膀胱脱」や「直腸脱」を合併することもあるので、注意しなくてはなりません。

子宮下垂・子宮脱の症状は?

子宮下垂、もしくは子宮脱になるとどのような症状があらわれるのでしょうか。

初期症状

・自覚症状がない
・陰部や下腹部の違和感

また、朝は自覚症状が少なく、日中に立ち時間が長くなったり、お腹に力がかかる動作が続いたりすることで夕方頃から症状があらわれやすい(一日の中で症状に変化がある)傾向にあります。

自覚症状

・陰部、生殖器など下腹部の違和感
・頻尿感、残尿感
・無意識の尿失禁、くしゃみや咳などの衝撃で起こる腹圧尿失禁
・外陰部や子宮腟部の乾燥感
・膣に潰瘍ができて痛みが生じる
・おりものが増える
・不正出血

自覚症状があらわれ始めると、陰部や生殖器など、下腹部に明らかな違和感が出てきます。

例えば入浴中、陰部に何かが触れるような感覚や、椅子に座るとお腹に何か押し込まれるような感じなど、いつもと違う感覚が下腹部に残るようになります。

また、おりものや不正出血が増えますのでいつもより下着が汚れやすいと感じることも。

子宮下垂や子宮脱とすぐには気がつけないことが多く、症状が悪化して初めて気づくことも少なくありません。

病状が悪化した後の症状

・排尿困難、尿閉
・便秘
・歩行に伴う痛み

病状が悪化するに伴い、さまざまな症状があらわれるようになります。これまで頻尿、くしゃみや咳などの衝撃で起こっていた腹圧尿失禁など、比較的漏れやすかった症状が一変、膀胱や尿道などが過度に圧迫されて排尿が困難になることがあるのです。

腟から脱出した子宮が下着などでこすれて出血するようになると、下着に血が付着して驚くかもしれません。

子宮下垂・子宮脱の原因は?

子宮下垂・子宮脱の主な原因は、子宮を支えている骨盤底群の腹膜と結合組織、靭帯などの伸縮性が弱くなって緩むこと、また骨盤底群のうち、子宮を主に支えている肛門挙筋という、肛門を周囲の骨から引っ張って支えている筋肉脆弱化して子宮を支える力が弱くなるためです。

子宮は、伸縮性の高い靭帯や筋肉に支えられているため、体内のあるべき位置にとどまることができます。

通常は子宮が下に下がったとしても、その伸縮性によって下がった子宮を持ち上げ、元の位置に戻すことができますが、この力が弱まると、子宮を元の場所・元の形に戻すことができなくなってしまい、脆弱化して子宮を支える力が弱くなるためです。

加齢や体質による影響でも骨盤底群にある靭帯や筋肉の力が弱まるため、子宮下垂や子宮脱は引き起こされます。

他にも肥満がちだったり、便秘気味だったりする場合や、立ち仕事が多い職業、介護などで瞬発的に力を入れたりいきむような場面が多いと、骨盤底群の靭帯や筋肉に過度負担がかかるため、発症発症しやすいと云われています。

そして、妊娠中は大きくなった重い子宮を骨盤底群の人体や筋肉が支え、 出産では分娩時のいきみによって、ダメージを加えやすいのです。

そのため、出産経験者は、出産経験のない人よりも発症リスクが高くなるとされています。

そのため、出産経験者は、出産経験のない人よりもそのリスクが高く、産後には症状があらわれやすいとされています。

子宮下垂・子宮脱になったらどうやって治療する?

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子宮下垂・子宮脱になると、すべての場合で症状が進行したり、治らなかったりするわけではありません。

産後の子宮下垂・子宮脱は、経過観察になることも多く、症状が軽いうちは、自宅療養と体操で症状を改善することができます。

産後はいずれも分娩の影響で骨盤底筋が緩みます。一時的に子宮が下がることはありますので、この骨盤底筋を鍛え、子宮を元の位置に引き上げることが重要になります。

自宅治療の種類は3種類あります。骨盤底筋を鍛える体操・トレーニング、フェミクッション、ペッサリー療法です。それぞれ順番に説明していきましょう。

骨盤底筋を鍛える体操・トレーニング

この体操は骨盤底筋のトレーニングとして、尿道・肛門・腟まわりの筋肉を鍛える体操です。陰部に違和感があり、子宮下垂や子宮脱が疑われるの場合はぜひ試してみてください。

1.2~3回軽く尿道・肛門・腟を締めたり緩めたりを繰り返します。
2.その後、尿道・肛門・腟をゆっくり少し力を込めながら締めて、そのまま3秒くらい止まります。ゆっくり締めていく動作を2~3回繰り返します。
3.締める秒数を3秒くらいから徐々に延ばしていき、1回に5分間くらいまで締められるようになれば筋力が戻ってきた目安とします。

ただし、無理をしすぎると逆に症状がひどくなる恐れもあるので、負担にならない程度でトレーニングを行いましょう。

1回に5分間を目指し、最終的には10分~20分まで引き締める時間を延ばしていければ十分です。

フェミクッションを使う

フェミクッションとは、下垂した子宮などの臓器を、柔軟性の高いクッションで受け止める、下着のようなデザインのサポーターです。

下着と同じように着用し、外側から骨盤を圧迫することで子宮が下がらないようにしてくれます。一昔前であれば「脱腸帯」がフェミクッションに近いものになります。

下着のように着用できるので、日常生活を送りながら子宮脱のケアすることができるのがポイントです。

定期的な通院が難しい人や、初期症状の場合には、フェミクッションを使って体の外から圧迫しつつ、骨盤底筋を鍛える体操やトレーニングを併用するのがおすすめです。

ただし根本治療ではないので、重症の人ではやはり効果を得ることは難しいです。また尿もれの症状がある人もおすすめできません。

通販サイトで購入することもできますが、まずは病院で相談してから使用するようにしましょう。

ペッサリー療法

ペッサリーは、下垂した子宮を下側から支えるための、いわゆるストッパーとなる治療器具です。リング状の器具を膣内に挿入して子宮の位置を維持する効果を得るものです。

排尿がスムーズにできている人、今後出産の可能性がある人、育児中の人、理由があって外科治療が難しい人などが、ペッサリー療法を選択するケースが多いです。

以前は、医療機関で挿入した後に定期健診を受診するのが一般的でしたが、最近では自分で朝はめて夜はずす着脱方式で使用できるようになりました。

自己着脱が可能になったため、ペッサリー療法も身近な選択肢として選ばれるようにはなってきましたが、使用には注意点もあります。

ペッサリーはあくまで子宮を下から支えるだけなので、着けることで治るというわけではありません

装着をやめれば子宮は下垂したままですし、挿入していても症状が進行する可能性はあります。もちろん症状が進行してしまうと十分な治療効果はなくなるため、外科手術が必要となります。

また挿入の注意としても、ペッサリーが腟にダメージを与えることで、ただれや出血が起こる可能性も。

自己着脱ができるとはいっても、自分の手が届かない部位に入り込んでしまった場合などは、医療機関ではずす必要が生じます。

長期間挿入していることで、膣壁の損傷や膣炎、腟潰瘍のリスクもあるので、このようなデメリットもあることを考慮してから使用するようにし、必ず医師の指示通りに使用するようにしましょう。

症状が重い場合の治療方法は?

尿道・肛門・腟を締めたり緩めたりする、骨盤底筋を鍛える体操やフェミクッションの使用、ペッサリー療法は、いずれも症状が軽い場合に改善が見込める対処方法なので、症状が重い場合や、これらの対処方法で効果のないときには、手術によって子宮を支える組織を補強することになります。

外科手術の方法は、子宮摘出術や膣前壁形成などの方法、もしくはル・フォール手術、メッシュ手術をとります。

子宮摘出術・膣前壁形成

子宮の摘出手術や膣前壁形成は、症状が特に重く日常生活に支障がある場合で行われます。

子宮摘出術は、下垂した子宮を取り出してしまう手術で、膣前壁形成とは伸びてしまった腟の一部を切り取り、縫合して靭帯に固定することで、腟の粘膜下にある筋肉を引き締めて、根本から締まりを良くするという手術の方法です。

どちらの手術も原因を直接取り除くことになりますので、根本的な解決方法としてこれらの手術を選択する人もいます。

開腹手術ではないので、手術自体にかかる時間も1時間半~2時間半ほどで、術後も10日前後で退院可能です。

子宮脱だけでなく、膀胱脱と直腸脱を同時に患っている場合では、子宮摘出術・膣前壁形成の方法をとるのが一般的ですが、膀胱脱か直腸脱のいずれかのみを併発している場合には、手術方法が若干異なるケースもあります。

ただし、子宮を摘出してしまう方法なので、これからまだ妊娠を望む人にはこの手術はできず、手術によって腟が狭くなってしまうと、術後の性交に支障が出る可能性があります。

しかし、腟に余裕を残して縫合してしまうと再発するリスクがあるため、これらの手術以外の方法も検討できる人は、よく考えるようにしましょう。

また、摘出によって子宮脱が改善しても、頻尿や腹圧尿失禁は改善しないことがありますので、リスクや説明を十分に受け検討することをおすすめします。

メッシュ手術

メッシュ手術とは、正式にはTVM-ATension-Free Vaginal Mesh(TVM)といいます。

合成繊維で作られたメッシュを膀胱と膣壁、もしくは直腸と膣壁のどちらかに縫い付けて緩んだ靭帯を補強する手術方法です。

症状に合わせて、膀胱と直腸のどちらの間にもメッシュを装着することはあります。

従来の手術方法と比較しても、再発率が低いことがメリットの一つです。また、退院までの日数が従来の手術方法よりも短いのも特徴です。

腟が狭くなり性交に支障が出ることもありません。手術後は3ヶ月ほど激しい運動や性交などを控える必要はありますが、その後は普段と変わりない生活を送ることができます。

子宮下垂・子宮離脱の予防

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子宮下垂・子宮脱の予防には毎日の生活習慣に注意することが大切です。規則正しい食生活で排便を我慢しないこと。

妊娠中、子宮に赤ちゃんがいる状態で長時間座りっぱなしだと、その重さで骨盤底筋を弱めることになります。休憩の際には座り姿勢よりも寝転がる方が良いです。

日常生活でも長時間の立ちっぱなしや力仕事で症状が悪化してしまいますので、妊娠中はもちろん、産後も体に負担をかけないよう、体力が戻らないうちは無理をせず、体を労ってあげてください。

また、産後でなくても骨盤底筋は加齢と共に緩んできます。

尿もれ予防にも、骨盤底筋のトレーニングは効果がありますので習慣づけておいて損はありません。

陰部に違和感があったときは

産後は子宮脱になりやすい状態ではありますが、子宮下垂になると必ず子宮脱まで進行するとは限りません。

また、子宮脱になっても、症状が軽いうちは骨盤底筋トレーニングなどで改善する可能性があります。

たとえ手術になっても方法はいくつかあり、次の妊娠を諦めなくても良い手術方法もあるので、かかりつけの産科医とよく相談して決定していきましょう。

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監修:成田 亜希子(医師)

プロフィール:弘前大学卒業後、内科医として地域医療に従事。その傍ら、保健所勤務経験もあり、国立保健医療科学院での研修も積む。感染症や医療行政にも精通している。プライベートでは二児の母。

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