妊娠37週から41週以降の臨月に入ると、いつ破水してもおかしくないといわれています。
ところが、妊娠中は尿漏れの症状が起こりやすく、破水との区別や違いがわからない可能性があります。
そこで今回は、
・破水とは何?
・破水と尿漏れの違いは?
・破水したときはどうすればいいの?
といった方に、破水と尿漏れの違いや特徴、「尿漏れではなく破水だった!」というときの対処方法などについて詳しくご紹介します。
この記事の目次
破水とは
妊婦さんのお腹の中にいる赤ちゃんは、子宮内の卵膜という袋の中で羊水に満たされています。
出産が近づくと卵膜が破れて中の羊水が母体の外へ流れ出ます。この状態が「破水」です。
臨月の妊婦さんは、赤ちゃんが成長して大きくなった子宮が膀胱を圧迫して尿漏れを起こしやすいため、水っぽく生暖かい羊水と尿漏れの違いがわかりにくいことがあります。
破水はいつ起こる?
一般的には、陣痛が始まり子宮口が全開した後に破水します。
出産の直前に自然と起こる破水は「適時破水」といい、陣痛が始まった後、子宮口が全開する前に起こる破水は「早期破水」といいます。
破水は通常、分娩の流れの中で自然に起こりますが、陣痛が起こる前に破水する「前期破水」もあります。
他にも子宮の上部が破れる「高位破水」が起こることもあります。
このような子宮口が全開する前に破水が起こるケースは、割合としては全体の約2から3割と珍しいことではありません。
しかし陣痛前に破水してしまうと、赤ちゃんが感染症にかかる可能性が高まりますので、早めに病院で受診することをおすすめします。
正産期内の妊娠37週から41週以降には、いつ破水してもおかしくない状態です。
ところが、重いものを持ち運んだり、妊娠後期に夜の営みをしたときなど、子宮に刺激や衝撃が加わることで正産期の期間内よりも前に破水してしまうケースがあります。
破水してから出産するまでにかかる時間は?
破水してから実際に赤ちゃんが産まれるまでにかかる時間は、短い場合で4時間、長い場合で30時間かかることもあり、個人差が大きく出ます。
破水(羊水)の特徴と尿漏れ(尿)の特徴
それでは破水と尿漏れはどのように違うのでしょうか。破水して出る羊水と尿の特徴や違いについて見ていきましょう。
破水(羊水)の特徴
透明に近い色をしていることが多いですが、個人差があります。無色透明、乳白色、黄色や黄緑色、ピンク色(出血が混じるため)など、羊水の色はさまざまです。
そして、羊水には独特の臭いがあります。しかし、この臭いについても個人差があります。
甘酸っぱい臭いもあれば、生臭さや精子の臭いがするということもあります。全然臭いがなく無臭の方もいます。
臭いの感じ方自体にも個人差があるので、尿(アンモニア臭)とは違う臭いがしたら羊水だと考えた方が良いです。
子宮口近くの卵膜が破れるため、通常は破水すると同時に大量の羊水が流れ出て来ることが多いです。
ただし、卵膜上部が破れる高位破水の場合では、少量が繰り返し出て来ることもあります。卵膜が破れるプツッという音がして大量の羊水が流れ出てくるということもあります。
尿漏れ(尿)の特徴
尿は特有の黄色をしています。尿も羊水も水っぽくサラサラしていますが、色には違いがあります。
そして、尿特有のアンモニア臭があり、尿漏れの場合、漏れるのは少量の場合が多いです。
破水と尿漏れの見分け方について
破水なのか尿漏れなのかは、色・臭い・量によって見分けることができます。
また、破水したら、自分の意思で流れ出る羊水を止めることはできません。一方尿漏れの場合には、少量が出て止まるか、自分の意思で止めることができます。
どのくらいの量が体外に排出されたかによって、破水なのか尿漏れなのかの判断基準になります。おしっこを我慢するような感じで腹部に力を入れ、確認してみるのも良い方法です。
もし、「破水かもしれない」と思っても、自分で判断ができない場合には、病院で判断してもらうようにします。
破水した量がごく少量のときには、色や臭いなどで自分では判別ができないこともあります。
破水であれば体を動かすたびに少しずつ、たらたらと流れ出てしまうことがありますが、本当に破水だったときにあまり体を動かしすぎると、赤ちゃんが感染症にかかるリスクが高まるため、今以上に羊水が流れ出てしまわないよう、体を横にして病院へ向かうようにしましょう。
尿漏れとは
尿漏れには種類があります。一つは「腹圧性尿失禁」です。
40代の女性に起きる尿漏れにはこのタイプが多く、咳やくしゃみをしてお腹に力が入った瞬間に尿漏れします。骨盤底筋が弱ってくることが原因で腹圧性尿失禁になることがあります。
もう一つは「切迫性尿失禁」です。膀胱が勝手に収縮したりするので、急にトイレに行きたいと思っても間に合わずに漏らしてしまうタイプの尿漏れです。
あと一歩というところで間に合わず漏らしてしまうのですが、過活動膀胱といって、膀胱が過敏になっていることが原因です。
尿漏れしやすい人の傾向とその場面
尿漏れは「しやすい人」の傾向と「起こりやすい場面」があります。一般的に尿漏れしやすい人の傾向と尿漏れしやすい場面をご紹介します。
1、尿漏れしやすい人
経産婦や肥満気味の方は尿漏れしやすい傾向にあります。特に、2人以上の出産経験がある経産婦の方では発症率が高くなります。
これには分娩時の骨盤底筋へ受けたダメージが原因となっている場合があります。肥満気味の方は減量することで改善されるとの報告があります。
2、骨盤底筋が緩んでいる
骨盤底筋とは骨盤の中で内臓を支えている筋肉の総称です。
骨盤底筋が健康であれば、腹部に力がかかった場合にも、反射的に尿道を締めて尿が漏れることはありませんが、骨盤底筋が緩むと尿道を締めることができずに尿が漏れてしまいます。
トレーニングで鍛えることができる筋肉なので、予防体操などで対策しましょう。産褥体操も有効です。
3、尿漏れが起こりやすい場面
咳やくしゃみをして腹部に圧力がかかったときが、一番尿漏れが起こりやすいとの回答があります。
それ以外には、スポーツや運動をしているときや大笑いしたときなど、いずれも腹部への圧力が関係しています。
体が冷えたときや冬の寒い時期なども起こりやすいシチュエーションの一つです。
妊娠中で尿漏れが起こりやすい人の傾向
妊娠中は尿漏れが起こりやすいですが、それには理由があります。子宮は膀胱の上に位置し、腹膜1枚で隣り合っています。
赤ちゃんがお腹の中で成長することで子宮が大きくなり、その重みで膀胱に圧力がかかります。子宮が膀胱を圧迫し尿道を塞ごうとする力に勝ってしまうため、尿漏れが起こります。
また、妊婦さんで尿漏れが起こりやすい人の傾向は通常とは異なるのも特徴です。
1、痩せ型で華奢な体型の人
やせ型できゃしゃな妊婦さんの場合、骨盤底も体型にあわせた大きさをしています。そのため、華奢な骨盤底に大きくなった子宮の重みが負けてしまい、尿漏れが起こりやすくなります。
2、静脈瘤(じょうみゃくりゅう)が出やすい人
妊娠中には足や陰部に静脈瘤ができることがあります。静脈瘤ができやすい体質の妊婦さんは一般に線維組織があまり丈夫でない傾向にあり、骨盤底が下にたわみやすいのです。
そのため、赤ちゃんの重さに耐え切れず尿漏れが起こります。
3、頻繁にトイレに行く人
もともとトイレが近い人は、持っている膀胱の容量がそもそも小さい場合があります。
尿漏れによく似た症状に要注意
圧迫やくしゃみで尿漏れするわけではないが、水っぽい帯下(たいげ/おりもの)なのか尿なのかわからないものが大量に出るという場合は、カンジダ膣炎や細菌性膣炎により、膣内に炎症が起きている場合があります。
出産時の赤ちゃんへの感染も考え、早めに受診し、治療しましょう。
破水した後にしてはいけないこと
破水してしまうと、赤ちゃんが細菌などに感染しやすくなります。そのため、破水した後にはしてはいけない行動があります。
1、シャワーや入浴など
破水すると子宮に雑菌などが入りやすくなります。妊婦さん自身には影響はないといわれていますが、赤ちゃんが感染症にかかる可能性があるので、入浴やシャワーは入らないでください。
また、トイレでウォシュレットを使用するのも厳禁です。万が一入浴中やシャワーの最中に破水してしまったとき人は、まずはお風呂から上がり、きれいなタオルで体を拭いて着替えをして病院へ連絡します。
破水したことに気がつかず、シャワーを使用したり入浴してしまった、もしくはウォシュレットを使用してしまったときには、病院に連絡してその旨伝えましょう。
まずは落ち着いて慌てずに対処しましょう。
2、車の運転
破水してしまったら病院へ向かいますが、その際に妊婦さん自身が運転するのはやめましょう。
陣痛前の破水で痛みがなかったとしても、不用意に体を動かすことで、余計に羊水が流れ出てしまう可能性があります。
そして運転中に予測できない症状があらわれたときには対処できません。必ずタクシーか家族の運転する車で病院へ向かうようにしてください。
救急車を呼んだ方が良い?
破水してすぐに出産が始まるというわけではありません。ですので、救急車を呼ぶ必要はありません。タクシーか家族の運転する車で向かって問題ありません。
しかし、子宮から赤ちゃんが出てきている場合や、大量出血で激しい痛みが伴う場合、羊水が緑色をしているなどの異常があるときには緊急のケースもあります。
病院へ連絡して指示を仰ぎ、必要に応じて救急車を呼びましょう。
3、落ち着いて動き回らないようにする
自宅で破水した場合には気持ちに余裕があるかもしれませんが、外出先で破水したときには慌ててしまいます。
病院へ連絡後はそのまま入院になることも多いので、入院準備もしなくてはいけません。ですが、急がないといけないと思い、動き回ってしまうと破水も進んでいきます。
また、大きなお腹で慌てるとぶつけたり怪我をしたり転んだりと、事故の元です。まずは慌てずに、母子手帳と診察券があれば、あとは何とでもなります。
痛みがあって動けなかったり、外出先にいるときには家族に入院準備をお願いして、妊婦さんはできるだけ横になった状態で病院へ向かいます。
臨月に入るといつ破水してもおかしくはないので、もしものときのために予め入院準備をしておくと安心です。
いつ破水してもいいように準備しておきたいこと
いつ破水するかはわからないので、母子手帳、診察券、健康保険証、大きめのタオル、夜用ナプキンなどの入院準備品ををまとめておくといざというときにも安心です。
タクシーで移動することもあるので、大きめのタオルを用意しておきシートに敷けるようにしておきます。車内を汚さないような配慮も必要です。
自宅に誰もいないときのことも考えて、タクシーの電話番号を控えておきましょう。誰かに電話してもらおうと思っていても、いざ破水したときにはもしかしたらそばに誰もいないという可能性もあります。
また、外出中に破水すると準備ができないだけでなく、助けを求められない状況だとすれば妊婦さん自身も不安になってしまいます。
臨月の頃はできるだけひとりでお出かけするのは控えるようにしましょう。
見分けがつかないときは病院へ
初産の妊婦さんだけでなく、経産婦の方でも破水か尿漏れかはわかりにくいものです。色・臭い・量で尿と羊水の違いがわからないときには、病院でお医者様に判断してもらうようにしましょう。
その際、尿漏れであればもうしばらく自宅で出産のときを待つことになりますが、万一破水している場合には、そのまま入院から出産となる可能性もあります。
また妊婦さん自身の判断で、尿漏れではなく破水したとわかったときには、落ち着いて行動することが大切です。
赤ちゃんは産まれる準備が整ったら自分でそのときを決めています。必ずしも予定日通りの出産とは限らないのでいつ入院となっても対応できるように、準備や心構えをしておきましょう。
監修:Etuko(産婦人科歴12年)
プロフィール:産婦人科医は「女性の一生の主治医である」と考える医師のもと看護師として12年勤務。述べ18万人の妊婦さんのサポートにあたる。筋肉、骨フェチで体幹バランス運動にて機能訓練をおこなっています。