母子ともに危険!?常位胎盤早期剥離の原因や症状・予防策とは

常位胎盤早期剥離は腹痛や出血を伴う?原因や対策・予防策は?


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妊娠中にお腹が痛いと感じることはよくある症状ですが、同時に不正出血が続くときには「常位胎盤早期剥離」を引き起こしている可能性があります。

常位胎盤早期剥離とはお腹に赤ちゃんがいるにもかかわらず、子宮壁から胎盤が剥がれてしまう疾患です。産科疾患の中では超緊急となる疾患で、最悪の場合、妊婦さんも赤ちゃんも死亡する危険性があります。

妊娠24~26週頃に起きやすいとされており、安定期であっても決して油断はできません。

そこで今回は、

・常位胎盤早期剥離は妊娠何週ごろが多いの?
・常位胎盤早期剥離は妊娠中に治らないの?
・常位胎盤早期剥離を起こさないように気を付けることはできる?

といった方に、常位胎盤早期剥離の前兆を見逃さないためにも、どのような症状があらわれるのか、何が原因で疾患が起こるのか、予防策も含め詳しくご紹介します。

常位胎盤早期剥離とは?

常位胎盤早期剥離とは

常位胎盤早期剥離は、赤ちゃんがまだ子宮にいるにもかかわらず、何かしらの原因で胎盤が子宮壁から剥がれてしまう状態のことをいいます。母体だけでなくお腹の赤ちゃんにも危険が及ぶ大変危険な疾患です。

常位胎盤早期剥離が起こるとどうなる?

常位胎盤早期剥離が起こると、胎盤が剥がれ落ち子宮壁から出血します。胎盤が子宮から剥がれると赤ちゃんへ流れていた血流が急激に減少し、栄養や酸素が届かなくなります。

さらに、母体では急激な大量出血が生じることで、出血を止めるための成分が大量に消費されます。その上、剥離した胎盤部の血管から血液を固める作用のさる成分が母体内に流入すると考えられており、全身で血液の凝固が引き起こされるようになる「播種性血管内血液凝固(はしゅせいけっかんないけつえきぎょうこ)症候群(DIC)」という状態になりやすくなります。

この状態になると、血液を固めるための血小板などが大量に消費され、次第に出血が止まりにくくなります。その結果、子宮の傷から大量出血を生じ、ショック状態となるばかりでなく、や肝臓・腎臓などの臓器障害が起こる可能性が高くなります。

そして症状が悪化した場合には、赤ちゃんの命に危険があるだけでなく、出血が続く子宮を摘出しなければならなかったり、妊婦さんが命を落としたりする危険性もあります。

常位胎盤早期剥離が起こる原因は?

常位胎盤早期剥離が起こる原因は

常位胎盤早期剥離が起こる大きな原因をいくつか挙げてみましょう。要因となるリスクをできる限り排除することが、常位胎盤早期剥離の一番の予防となります。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、常位胎盤早期剥離を引き起こす原因の1つとなります。
早産や胎児発育不全、母体の脳出血などを引き起こす原因にもなるので、妊娠中はこの疾患を発症しないよう特に注意が必要です。

妊娠高血圧症候群に当てはまらない場合でも慢性的に血圧が高い状態が続くと常位胎盤早期剥離の原因とされているため、妊娠中は塩分の摂り過ぎや食生活に気をつけ、血圧のコントロールをしっかりと行いましょう。

絨毛膜羊膜炎

絨毛膜羊膜炎は、赤ちゃんを包んでいる脱落膜・絨毛膜・羊膜の3層の膜のうち、絨毛膜と羊膜に炎症が起こる病気です。

炎症に気がつかずにいると、子宮が収縮して破水を起こし、切迫早産や早産・流産・常位胎盤早期剥離を引き起こす原因になります。

胎盤の虚血

母体の血栓症や胎盤の血管形成異常などによって胎盤が虚血することが発症の引き金となることもあります。

常位胎盤早期剥離の既往

一度常位胎盤早期剥離を引き起こすと次回の妊娠でも起こりやすいとされています。

最初の妊娠で発症した場合、次の妊娠時にはより注意をする必要があります。

前期破水(子宮内圧の低下)

破水によって子宮内圧が急激に減少したり、急激な子宮収縮が生じたりすることから常位胎盤早期剥離を引き起こすケースがあります。

喫煙

喫煙は常位胎盤早期剥離のリスクを高めます。その発生頻度は、喫煙しない方と比較すると2倍近く差があります。
また喫煙は赤ちゃんの発育不全につながるため、妊婦さんはもちろん、受動喫煙予防のために家族にも禁煙してもらうのがベストです。

外的刺激(交通事故などによる腹部への刺激)

交通事故などで受けた外的な刺激や衝撃も、常位胎盤早期剥離の原因となる場合があります。常位胎盤早期剥離が起こる原因の1〜2%ほどを占めます。

刺激や衝撃を受けた後すぐに発症するケースと、ある程度時間が経ってから発症するケースがあります。

万が一腹部に外的な衝撃を受けた場合には、なるべく早めに病院を受診して、胎児心拍モニタリングなどの検査を受け、医師の指示があるまで検査を続けたり、安静にしたりしておくようにしましょう。

他にも、子宮筋腫などの合併症も常位胎盤早期剥離の原因になる可能性があるため、妊娠中に発症しやすい疾患に知識を持ち、対応できるようにしておくことが大切です。

常位胎盤早期剥離が起こる確率は?

常位胎盤早期剥離が起こる確率は

常位胎盤早期剥離は全妊娠の0.3〜0.9%ほどの確率で、頻度自体はそれほど多くはありません。

しかし、ここで挙げた以外の原因からでも引き起こされる可能性はあり、妊婦検診でも事前に発見するのは難しいため注意が必要です。

また、常位胎盤早期剥離は臨月に突然に発症することもあれば、分娩の経過中に産院で突然起こることもあります。進行状況だけではなく発生するタイミングも予測することはできません。

そのため、常位胎盤早期剥離とはどのような症状があらわれるのか、自分でもよく理解しておくことが大切です。

疾患に重症や軽症はある?

重症か軽症かは、胎盤の剥離した面積によって変わってきます。剥離面積が30%以下は軽症、30%〜50%ほどであれば中等症、50%以上で重症と判断されます。

通常、胎児心拍数モニターと超音波検査での診断を行います。しかし、あまりにも軽症の場合には、不正出血や腹痛などの症状が出ないことも多く、胎児心拍数モニターやエコーで確認しても、赤ちゃんや胎盤の異常、子宮収縮などが見つからないために発見が遅れる場合があります。

常位胎盤早期剥離は早期発見することが重要です。
治療で進行を遅らせたり出血を止めたりすることが不可能なため、赤ちゃんと妊婦さんを救うには迅速な対応が求められます。そのためにも、以下のような症状がある場合にはなるべく早めにかかりつけの病院に相談するようにしましょう。

常位胎盤早期剥離が起こる前触れや症状はある?

常位胎盤早期剥離が起こる前触れや症状はある

症状の重症度だけでなく進行速度によっても異なりますが、次のような症状があらわれるときがあります。

強い腹痛

妊娠中はお腹の張りや腹痛はつきものですが、常位胎盤早期剥離で起こる腹痛は、継続的で起きていられないほどの痛みが続きます。痛みに耐え切れず失神して運ばれる妊婦さんもいるため、通常の腹痛とは異なります。

動けなくなるほどの腹痛の場合は、すでに重症で進行速度も速いです。症状が軽い場合、強い腹痛が起こる確率は低いですが、お腹が硬くなることがあるので「お腹が痛い」もしくは「お腹が硬い」、「お腹の張りが続いている」と感じたら、早めに病院の指示を仰ぎましょう。

不正出血

常位胎盤早期剥離の前触れとして、不正出血があります。ただし出血量が少ないので、そうとは気がつかない妊婦さんもいます。

見た目に出血している量は少なくても、子宮の中では大量出血していることもあり、貧血を起こしてめまいや立ちくらみなどの症状ある場合もあります。いずれも軽症の場合にはわかりにくいことがあります。

胎動がなくなる

通常は妊娠後期に近づくにつれて胎動は大きく激しくなるものですが、常位胎盤早期剥離を引き起こしているときには、子宮壁が剥がれて赤ちゃんへ酸素や栄養が届かなくなっているため胎動が少なくなっていきます。

胎動は35分で10回以上感じるのが平均とされています。何時間も胎動を感じない場合には、お腹の中で赤ちゃんが弱っていることがあります。

また、臨月になると出産を控えて赤ちゃんが子宮口へ降りてくるので「胎動が少なくなる」とされています。

しかし、あまりにも胎動が少ないときには注意が必要です。陣痛が起きてから常位胎盤早期剥離であることが発覚して、緊急帝王切開になる妊婦さんもいるので、胎動を感じるようになってからは毎日動きを確認しましょう。

切迫流産・早産の兆候があるとき

切迫流産や早産の兆候がある場合に、検査をして常位胎盤早期剥離であることもまれですがありますので注意が必要です。

切迫流産とは?

切迫流産とは、流産が差し迫っている妊娠22週未満の状態をいいます。といっても、すべてが流産につながるわけではありません。安静などの適切な治療を受け、赤ちゃんの心拍が確認されれば、そのほとんどが妊娠を継続できます。

切迫早産とは?

早産の一歩手前の状態で、赤ちゃんが妊娠22週~36週の間に生まれそうになることです。正期産ではないのに子宮収縮が起こり、子宮口が開いて破水することもあります。このように赤ちゃんが生まれてこようとしている状態が切迫早産です。

常位胎盤早期剥離の検査方法は?

常位胎盤早期剥離の検査方法は
通常の検査は胎児心拍数モニターと超音波検査で行います。これらに加え、貧血や血液凝固などの状態などをチェックするために血液検査をします。

超音波検査では、胎盤が剥がれ出血した血が塊となり、子宮壁と胎盤の間に挟まっていないか、胎盤が厚く肥大して映っていないかを確認します。

しかし、超音波検査では軽症な場合には発見できないこともあり、この検査で明らかな出血形跡があるときには、すでに重症で超緊急の状態です。

早期発見のためには、超音波検査と併せて胎児心拍数モニターで心拍数や、子宮収縮の有無を確認し、血液検査の数値も見た上で総合的な判断を行うことになります。

常位胎盤早期剥離は、腹痛・不正出血・胎動の減少などの症状があらわれるものの、軽症の場合にはその症状がはっきりと出ないため、発症の疑いがあるときには万が一のことを考えて入院管理を行うとも少なくありません。

また、これらの検査では異常が見受けられない方も多くいるので、妊婦さん自身だけでなくお医者様も「剥離の可能性がないかどうか」という視点での観察がとても重要となります。

常位胎盤早期剥離の赤ちゃんへの影響は?

常位胎盤早期剥離が重症化すると、赤ちゃんの死亡率は50%になるとされています。

また、助かったとしても胎盤が剥がれ酸素が送られなかった影響で、新生児仮死などになる可能性が高いです。低酸素症の影響は重く、麻痺などの後遺症が残ることもあります。

常位胎盤早期剥離の妊婦さんへの影響は?

赤ちゃんを娩出した後、出血がおさまらない場合には子宮に巡る血管を塞いだり、子宮を摘出する処置を施すことがあります。

胎盤が剥がれ落ちることで大量出血を引き起こす、出血により血圧が下がりショック状態に陥るなど、手術中に危険な状態に陥る可能性もあります。

常位胎盤早期剥離の出産への影響は?

常位胎盤早期剥離で一番多いのは、症状が中等症のケースです。症状と進行状況にもよりますが、緊急帝王切開で赤ちゃんを速やかに娩出することが大半です。

しかし、常位胎盤早期剥離の症状が軽症の場合には、入院して安静に努めることで自然分娩が可能なケースもあります。

これらはごくまれなケースですが、早期発見と安静によって自然分娩できる確率が上がるのです。

常位胎盤早期剥離は治療できる?

常位胎盤早期剥離は治療できる
常位胎盤早期剥離は治療することで症状を抑えたり、進行を遅らせたりすることが不可能です。

また、処置が遅れることで母子ともに命の危険があるので、その対応は時間との戦いになります。陣痛とは異なる強い腹痛が続き、少量でも継続して出血が認められるような場合には、至急産婦人科を受診しましょう。

常位胎盤早期剥離はどうやって予防する?

常位胎盤早期剥離の予防には、今回ご紹介した剥離の原因となる病気や症状を、引き起こさないようにすることが大切です。原因となる要因の一つひとつに対策できることは何かしらあります。

また、何よりも普段の生活に気をつけることが予防につながります。中でも妊娠高血圧症候群を予防することは、常位胎盤早期剥離を引き起こさないためにも大変重要なことです。

そして、常位胎盤早期剥離は、早期発見できることで早急に治療を行い、母子の安全を守ることができます。そのために定期的な妊婦健診は一番大切です。

健診までに出血があった場合には、日時や量、頻度などをしっかり把握して早急に病院を受診しましょう。
外的な衝撃や刺激も大目に見ず、転倒したり下腹部をぶつけたりするなどした際には、目立った外傷がなくても念のために受診しましょう。また禁煙も早めに始めることでリスクは低下します。

異常があれば早めに受診しましょう

異常があれば早めに受診しましょう

常位胎盤早期剥離は、妊娠24~26週頃に起きやすいといわれており、たとえ安定期であったとしても油断はできない疾患です。

早期発見により妊婦さんと赤ちゃんの命が左右されるといっても過言ではないので、異変にいち早く気がつけるかどうかも鍵となります。

また、病態がゆっくり進行することはまれで、進行の早いものだと発症してから数時間で母子が死亡するケースもあります。妊娠したら体の異常に敏感になりましょう。

そして、お腹の痛みやお腹が硬いと感じるときには、症状が我慢できるほどの軽いものであったとしても、お医者様に伝えるようにしてください。

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監修:成田 亜希子(医師)

プロフィール:弘前大学卒業後、内科医として地域医療に従事。その傍ら、保健所勤務経験もあり、国立保健医療科学院での研修も積む。感染症や医療行政にも精通している。プライベートでは二児の母。

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