風疹はほとんどが子供の頃にかかる病気ですが、近年大人になってからも感染例が増えています。
抗体がある場合は2度とかからないとされていますが、実は1度作られた抗体も減少する場合があります。
そして、妊婦さんが風疹にかかると赤ちゃんに障害が出る可能性が非常に高く、注意が必要な感染症のひとつです。
そこで今回は、
・風疹とはどんな病気なの?
・妊娠中に風疹の予防注射を受けても大丈夫?
・妊娠中の風疹を予防する方法を教えて!
といった方に、妊娠中に風疹に感染した場合の胎児に及ぼす危険性や、その症状・予防法などについて詳しくご説明します。
この記事の目次
風疹とはどんな病気?
風疹は別名三日はしかとも呼ばれます。風疹ウイルス(RNAウイルス)に感染することで起こる発疹性の感染症です。
風疹の感染力はインフルエンザよりも高いといわれているため、周囲に風疹患者がいるときには妊娠中は警戒が必要です。
麻疹(はしか)と混同されがちですが、こちらは「麻疹ウイルス」への感染によって起こる病気で、原因となるウイルスがまったく違うものになります。
感染時期はいつ頃?
風疹は春から夏にかけての感染が多く、咳やくしゃみなどの飛沫感染で人から人にうつります。
風疹の症状は?
感染後の潜伏期間は2〜3週間と長く、発症すると首や顔に赤く小さな発疹があらわれます。最初は小さな発疹ですが、そのうちに全身に広がり発熱、リンパ腺の腫れ、関節痛などの症状がでてきます。
しかし、症状自体は重症ではなく3日もすれば落ち着いてくるので、「三日はしか」という名前で呼ばれます。
1度感染すると体の中に風疹ウイルスの抗体ができるため、以後は風疹にはかからなくなります。
妊婦さんに風疹が危険な理由
妊娠中風疹に感染しても、実は妊婦さん自身には大きな影響はありません。発熱や発疹の症状があらわれる程度か、人によっては症状がまったくあらわれない場合もあります。
妊婦さんの風疹感染が危険だといわれる理由には、赤ちゃんへの影響が大きいからです。
風疹ウイルスが赤ちゃんに影響する時期と確率
妊婦さんが風疹にかかると、風疹ウイルスが胎盤を通してお腹の中の赤ちゃんに感染します。赤ちゃんが感染すると先天性風疹症候群を引き起こします。
そして、風疹ウイルスが赤ちゃんに影響を及ぼすかどうかは、妊婦さんの感染時期によっても異なります。
妊娠初期の12週未満
妊娠初期の12週未満で感染すると、この頃は胎児の器官形成を司る大事な時期となるため、産まれてくる赤ちゃんに障害があらわれる可能性が高くなります。
妊娠初期での風疹感染は、80〜90%の確率で胎児にも感染し、そのうち約90%の赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症します。
妊娠18週以後
妊娠18週以後は胎児が感染する確率は40%ほどに減り、先天性風疹症候群を引き起こす確率はほぼ0%です。
妊娠初期の赤ちゃんの脳や体が形成される時期の感染が一番影響を及ぼしやすく、障害が残る危険性も高いため、この時期は特に風疹などの感染症に気をつけなければいけません。
先天性風疹症候群とは?
妊娠初期の妊婦さんが風疹に感染することで、胎児にあらわれる疾患のひとつです。
お腹の中の赤ちゃんが、産まれながらに目の疾患や心臓の異常、難聴などの症状を持っていることがあり、これらの症状が風疹に感染した新生児の特徴です。
先天性風疹症候群の三大主症状
先天性風疹症候群には三大主症状と呼ばれる、3つの特徴的な病気があります。それぞれ詳しくご説明していきましょう。
視覚障害(白内障、緑内障、網膜症など)
視覚障害の中でも、風疹ウイルスの感染が原因で多く起こるのが白内障です。子供が産まれながらにこの症状を持っている場合には先天性白内障と呼ばれます。
先天性白内障の症状
先天性白内障は、赤ちゃんが産まれてすぐの頃や、1歳を過ぎた頃、もしくは思春期の頃に眼球にある水晶体が混濁し始める疾患です。
通常眼球は透き通っていて眼底に光を集めることで物を見ています。
しかし、眼球が混濁(こんだく)すると光を集めることができなくなるため、視界が霞(かす)んだり、昼間と夜間での見え方が異なってしまうなどの視力障害や、視力が低下するといった疾患があらわれます。
手術は必要?
白内障自体は先天性風疹症候群だけの症状でなく、高齢になることであらわれる疾患でもあり治療法も存在します。
万が一感染し白内障の症状があらわれた場合、一般的には手術による治療を行います。
手術方法は眼球の混濁した部分を取り除き、切除の範囲によっては人口水晶体を代用するなどで視力を補う方法を取ります。
先天性心疾患
先天性心疾患の中でも多く起こる心奇形は、心臓の形や構造が一般的な形とは異なっていることをいいます。
出生児に先天性奇形と認識される確率は約3%ほどで、先天性奇形の中でも約1%赤ちゃんが心奇形で生まれてきます。
手術は必要?
心臓の奇形は軽度の場合、自然に治癒することもありますが、一般的には手術を行うことが多いです。乳児期にも治療は可能で、手術によって完治する病気です。
先天性心疾患でもっとも多い種類
心奇形の中でも特に多いのが動脈管開存症という症状で、動脈管が自然に閉じずに残ってしまう病です。
動脈管開存症の症状
お腹の中の赤ちゃんは胎盤を通して栄養や酸素を受け取っています。酸素を口から取り入れていないため肺が動いておらず、肺には血液を流す必要がありません。
動脈管は肺動脈と大動脈をつなぐ小さな血管ですが、肺ではなく全身に新鮮な血液を流すために必要な血管です。
しかし、生まれた後は大人と同じように肺呼吸が必要となり、お腹の中で妊婦さんと赤ちゃんをつないでいた動脈管が必要ありません。
生後48時間以内には動脈管は縮み、血液はこの動脈管からほとんど流れなくなって、生後1~2日ほどで完全に閉じます。
ところが、何かしらの原因でこの動脈管が開いたままの状態になると、動脈管開存症として、心臓の構造が正常でなくなり、全身に血液を送る心臓の働き自体に支障があらわれます。
動脈管開存症は先天性の心疾患のひとつで、約2,000人に1人の頻度で見られます。
妊婦さんが風疹に感染すると、お腹の中の赤ちゃんにも感染して動脈管開存症になりやすくなりますが、風疹ウイルス以外の原因によっても疾患が起こることもあります。
手術は必要?
疾患は女性に多く無症状なため、特別手術などは行わないことがほとんどですが、放置しておくことと感染性心内膜炎や心臓に感染や炎症を引き起こすなどのリスクもあるため、早めの手術をおすすめします。
聴覚障害(難聴)
難聴とは音が聞こえにくくなる症状ですが、その中でも感音性難聴といわれる種類があらわれやすいです。
感音性難聴は内耳から聴神経が故障している状態で、神経性の難聴
ともいえます。
感音性難聴の症状
内耳で聞こえてきた音が上手に処理されないため、音を信号としての上伝える神経が上手く機能しません。
そのため音がはっきりと聞こえず、反響したりこもって聞こえてしまい聞こえないという音量の問題の以外にも聞き取れないという音質の問題も加わります。
手術は必要?
感音性の難聴については早期のリハビリが一番の治療であるとされますが、残念ながら現時点では治療の方法がありません。
先天性の難聴は聴覚障害児教育を行うのが一般的です。
重度の難聴で補聴器であまり効果が得られない場合は、人工内耳の装用を考えてみましょう。
人工内耳は、インプラントと呼ばれる機械を、手術で側頭部に埋め込む手術です。
音を増幅する補聴器とは異なり、人工内耳は、音を電気信号に変換して、より自然な聴こえに近づけます。
妊娠中に風疹の予防接種を受けてもいいの?
子供の頃に風疹にかかったことがなく、大人になってからも発症していないので抗体がないという方もいます。
妊娠前であれば予防接種をしても問題はありませんが、妊娠中にはさまざま不安があります。
予防接種というのは、基本的には少量のウイルスを直接体の中に取り込み抗体をつける方法です。
風疹のワクチンも生ワクチンといって、風疹ウイルスを少量注射して取り入れることで免疫を作ります。
そのため、風疹を発症する可能性がゼロではないのです。妊娠中にはこのワクチン接種はできませんので、妊娠しているとわかっている場合には予防接種は受けないようにしましょう。
妊娠中に予防接種をしてしまった場合は?
妊娠前であれば抗体がないと知って予防接種を受けれます。しかし、妊活中などでそのときにはもう妊娠していたということもあります。
しかし、現段階で妊娠中に受けた風疹の予防接種によって赤ちゃんに障害が出たというケースは報告されていません。
ですので、万が一ワクチンを接種した後に妊娠していたことがわかっても、必要以上に心配しなくても大丈夫です。
どうしても不安に思う場合には、ウイルス遺伝子の検査を受けることで赤ちゃんへの影響を調べることができるので、病院で相談してみましょう。
もし妊娠中に風疹にかかってしまったら?
これまで風疹にかかったこともなく、予防接種もしていないので抗体がないにもかかわらず、妊娠中に風疹にかかってしまったときにはどうしたらいいのでしょう。
残念ながら妊娠中風疹にかかってしまった場合、有効な治療方法はありません。
妊婦さんの発熱や発疹に対する治療はできますが、赤ちゃんの先天性風疹症候群に対しては、妊娠中にできる治療はないのです。
生まれてからあらわれた障害に対する手術や治療、リハビリを行うことになりますので、妊娠12週未満での風疹ウイルスに感染しないように気をつけることがもっとも重要となります。
また、風疹にかかってしまったときには、自分自身が感染源となる可能性があります。
病院での飛沫感染の危険がありますので、他の妊婦さんへうつさないためにも受診する前に、まずはかかりつけの産婦人科や病院へ電話して指示を仰ぎましょう。
風疹の抗体があるという思い込みに注意
近年では風疹の予防接種が義務となっているので、子どものときにワクチンを接種していると思い込んでいる場合があります。
確かに1977年以降は、女子中学生に風疹の集団予防接種が行われていましたが、1985年の予防接種法改正に伴い、男女ともに1~7歳半と12~16歳の期間に定期接種することになりました。
しかし、集団接種ではなく個別接種だったため、両親がこの予防接種を受けてない場合もあります。
個別接種となっていた1979年4月2日~1987年10月1日の間に生まれた人は、予防接種の谷間世代となるので抗体がない可能性があります。
予防接種を受ければ母子手帳に記載されます。また、両親に確認してもよいでしょう。心配な場合には病院で検査を受けて確認することをおすすめします。
一度かかっただけでは抗体は作られない?
以前に1度風疹にかかったから抗体があると思い込む方もいますが、感染したのが実は風疹でなかったり、一度かかっただけでは充分に抗体が作られない場合もあるので注意が必要です。
年月が経つにつれて、体内の抗体が減少することもあります。風疹は一度感染したら2度とかからないとされますが、最近では、抗体が減ることでもう1度感染する可能性があることがわかってきました。
再感染では赤ちゃんへの影響は少ないですが、障害が出る危険性がまったくのゼロではありません。もしはっきりとわからない場合には抗体検査を受けるのが確実です。
検査によって抗体の数値を確認し、再感染する確率が高い場合には、妊娠前に予防接種を受けておくと安心です。
風疹の予防方法は?
妊娠がわかった後に風疹の抗体がないと判明した場合には、ウイルスに感染しないことが大切です。予防するため、特に以下の2つに気をつけましょう。
また、妊娠初期の12週までは特別に注意して、念のため妊娠18週までにもかからないように心がけることが重要です。
飛沫感染を避ける
風疹ウイルスは人から人へとうつりますので、妊娠初期は人混みを避けるのが一番です。
外出したら手洗いうがいをしっかりと行い、外出中はマスクを着用して感染を防ぎます。
家族からの感染を予防する
妊婦さんがどんなに気をつけていても、同居している家族が感染したら感染率は一気に高まります。
旦那さんや一緒に暮らしている家族に抗体があるかどうか調べてもらうのも大事です。
家族の誰かがウイルスを家庭内に持ち込まないよう、抗体のない方には予防接種を受けてもらい、風疹ウイルスが赤ちゃんにどのような影響や危険性があるかを共有して、理解してもらいましょう。
感染症から赤ちゃんを守りましょう
風疹は妊婦さん自身には大きな影響は出ない感染症ですが、お腹の赤ちゃんには大きな影響と危険性を及ぼす大変恐ろしい病気です。
先天性風疹症候群として主な症状を3つ挙げましたが、精神や身体に発達の遅れが出る場合もあります。妊娠初期は赤ちゃんの脳や体など大切な器官が形成される時期でもあります。
妊娠の影響で妊婦さんの体には変化が起きていて、ホルモンバランスが乱れたり免疫力が落ちて、風邪をひいたり体調を崩しがちです。
規則正しい生活やストレスを溜めない基本的な健康管理に気を配り、無理をしすぎず自分をセーブしながら過ごしましょう。