妊娠中、妊婦さんの頭を悩ませる主な症状に腰痛があります。立っていても痛い、横になっても痛い、痛くて寝返りも打てないと、苦痛を覚える人も多いのではないでしょうか。
お腹が大きくなるにつれて痛みが増すこともあるので、はやめにご自身にあった対処法を見つけることが大切です。
そこで今回は、
・妊娠中に腰が痛くなるのはどうして?
・妊娠による腰痛と生理前の腰痛との違いは?
・妊娠中の腰痛の対処法を知りたい!
といった方に、マタニティライフを少しでも楽しむためにも、やっかいな腰痛の原因と、11の対処法をご紹介します。
この記事の目次
妊娠中の腰痛
妊娠して腰痛が起きる原因として、代表的なものが4つがあります。まずは、腰痛の原因を知り、対策に役立てましょう。
姿勢が変化することで起こる腰痛
妊娠して10㎏前後体重が増加することで、無意識のうちに姿勢が変化します。
身体全体もふっくらしてきますが、一番大きくなるのはお腹です。骨盤や腰椎が前方へ傾き、重心が前方へ変わっていきます。
ただ、そのままだと倒れてしまいますので、背中の筋肉が後方へ支えてバランスを取っているのです。これにより、絶えず背中が張った状態になっているので腰痛が起こります。
体重管理については、「妊娠中の無理なダイエットは禁物!妊娠中の体重管理のコツ」で詳しく紹介しています。
まずは、姿勢に気をつけましょう。温めたり、背筋が伸びる運動を取り入れていきましょう。
ホルモンの分泌が原因による腰痛
妊娠3カ月ごろになると、卵巣ホルモンの一種であるリラキシンというホルモンが分泌されます。
このホルモンは胎児が出産の時に狭い骨盤を通れるように、関節や靭帯を緩める作用をします。
出産には必ずといっていいほど必要なホルモンなのですが、結果、緩んだ骨盤やお尻の筋肉を支えようとして腰痛が起きます。
ホルモンは、3カ月頃から増え始め、4カ月頃(12週)でピークを迎えます。6カ月(20週)以降は低下し、7カ月(24週)までは横ばいです。
その後、妊娠後期ではまた増え始めますが、それに応じて腰痛が起きる率も上がっていきます。
リラキシンは妊娠初期から分泌されますが、たとえ同じような姿勢をとったとしても腰痛にならない人もいます。しかし、妊娠前から腰に問題があった人はとても再発しやすいという特徴があります。
腰痛の他にも足の付け根に痛みを感じたり、お尻や太ももにしびれを覚える人もいますので、その都度できることを試してみるといいでしょう。
頭の緊張や目の疲れから起こる腰痛
妊娠中は、長時間の買い物なども困難になることから、インターネットなどを利用する方も多いのではないでしょうか。
テレビや携帯電話もそうですが、近年は何をするにおいても目を酷使してしまいがちです。
頭の緊張や目の疲れなど、過度になると骨盤が硬直して腰自体に痛みが走るようになります。
使用時間に目安を設けるなどして眼や脳も休ませてあげましょう。
心理的な不安から起こる腰痛
何度も出産を経験している方でもそうですが、初めての出産ならなおさら赤ちゃんを産むことに不安を感じることでしょう。
心理的な不安は身体をこわばらせ、無意識のうちに腰や肩までも収縮させてしまいます。
すべてを拭うことはできないかもしれませんが、パートナーに不安を吐きだしたり、自分の好きなことをしてリラックスしてみるなど気分転換を心がけましょう。
腰痛の対処法
これまでご紹介した通り、腰痛と出産は切り離せない部分が多いことが分かります。では、どうすれば腰痛を和らげることができるのか見ていきましょう。
1.重い物の持ち方
重い荷物や子どもを抱きあげるときに、急に持ち上げると腰に筋の通ったような痛みが走ります。ゆっくりと重心を移動させてあげることが大事です。
片膝をつけて、腰から上に重心を動かしましょう。平面の靴よりも、2、3センチヒールのある靴の方が重心が後ろにかかるのでオススメです。
ただ、ピンヒールのような細いものだと危険です。しっかりとしたものを選んで履きましょう。
妊娠中の靴に関しては、妊婦さんの失敗しない「ヒール靴」の選び方の記事にて詳しくご紹介していますので、参考にしてください。
2.骨盤ベルト
腰痛で歩くのも辛い時は、骨盤ベルトを使用してみるといいでしょう。
骨盤の中央、前部、太ももの張っているところの3点を結ぶラインをベルトで巻くようにして使います。骨盤のゆるみや歪みを防いでくれるだけでなく、便秘も解消することができます。
ドラッグストアなどでも最近はさまざまな骨盤ベルトが販売されています。柔らかな素材を重視したものや、よりしっかりと巻けるもの、伸縮性がよくてフィットするものなどがあります。自分にあったものを見つけましょう。
ただ、着ける時には注意が必要です。普通のベルトの感覚で使用すると、位置が高すぎます。
場所によっては胎児に影響がでることもありますので、医師や助産師さんの指導を仰いでみると安心です。
妊娠中はもちろん、産後も骨盤を整えることは大切です。使い続けてみるといいでしょう。
3.エクササイズ
腰が痛くなるのは筋肉が張っていることが原因です。エクササイズをして筋肉をほぐしてあげることで痛みを緩和することができます。
ヨガやストレッチなどを含めてエクササイズは効果的です。妊娠4から5カ月くらいまでは、あまりお勧めできませんが、その後は、特に問題はありません。
ただし、気分の優れない時に無理することは禁物です。他の方法で腰痛の解消を目指しましょう。では、エクササイズをして腰回りの血流を良くするポーズを見ていきましょう。
3-1.二人組みストレッチ
向かい合って、それぞれ肩幅くらいに両足を広げます。お互いの肩に両手を置き、前身に倒しながら背筋を伸ばしていきましょう。ゆっくりと息を吐きながらリラックスします。
無理をして倒し過ぎるとバランスを崩しますので、背筋が伸びて気持ちいいと感じたら、ゆっくりと態勢を起こします。
何度か繰り返すといいでしょう。旦那さんなどとお風呂上りに試してみましょう。
3-2.ネコのポーズ
マタニティヨガでは、定番のポーズです。両足の膝をつけて四つん這いになり、肩幅ほどに開きます。息を吐きながら背中を丸め、息つぎをして、また息を吐きながら今度は背中を反らします。
ゆっくりと繰り返し、腰を伸ばしていきましょう。首を伸ばしてすると風邪予防にもなりますので、時間のあるときにやってみましょう。
5.マタニティスイミング
妊娠中期から可能な運動に、マタニティスイミングがあります。水力を使って移動するので、普通に運動するよりも体力を必要としません。
もちろん体調の悪い時に行ってはいけませんが、腰の痛みを緩和させるのには効果的な運動方法です。
いるか飛びやドルフィンキック、バタフライなども脊椎をしならせる動きをします。この泳ぎ方は逆子も治すといわれていますし、腰痛にも効きます。ただ、必ず専門家の指導のもとで行うようにしましょう。
6.マッサージ
妊娠中はうつぶせになれません。横向きか椅子にまたがって、背中と腰を出してマッサージしてあげると腰痛も軽減します。パートナーなどにやってもらいましょう。
一番簡単にできるマッサージを紹介します。妊婦さんが横になり、楽な姿勢の方へ身体を倒します。
まず、背筋の両側を親指で押していきます。肋骨の下の延長線辺りから始めて、お尻に向かってゆっくりと下がっていきます。空いた方の手のひらは腰を包むようにおいてあげましょう。力を入れる必要はありません。
たくさん押すと効果があるというわけでもありませんので、痛みがあるようなら止めましょう。
リンパマッサージというのもありますが、腕や首、他の部位などむやみにマッサージすることは控えましょう。慣れていないと、マッサージ後に吐き気やだるさが出てしまう恐れがあります。
7.湯船にしっかりつかる
腰痛は筋肉が凝り固まっていることで起こりますので、ほぐしてあげれば痛みも和らぎます。
特に、身体を冷やすことはいけません。シャワーだけで毎晩済ませている人もいるかもしれませんが、半身浴でも高い緩和効果が期待できますので、少しでも湯船につかって身体を温めてあげましょう。
温めることは妊婦さんにとって、とても良いことですので、さっそく試してみましょう。
8.患部を直接温める
患部に直接当てるのは、蒸しタオルがオススメです。やけどしない程度の熱さのお湯に浸して痛いところに当てます。3回ほど繰り返す頃には少しずつ痛みが和らいでいきます。
電子レンジで濡れたタオルを簡単に温めることもできますが、くれぐれもやけどには注意しましょう。
時間が経過して冷たくなると逆に良くないのでは、と思ってしまいがちですが、そうではありません。熱い、温かい、冷たい、この繰り返しが刺激となって血液を循環させます。
痛みや不快感の原因となる老廃物が出されて、症状は徐々に緩和していきます。リラキシンの他にも、プロスタグランジンによる子宮の収縮は冷えやむくみが原因の血行不良から起こるといわれています。
9.日常生活に工夫を
腰が痛いからといって、家事をしないわけにはいきません。対処法をやってみた上で、他にできることといえば、少しずつ腰に負担を与えないようにしてあげることです。
たとえば、アイロンや掃除機をかけるときは、前傾姿勢になる時間を減らしてあげましょう。椅子に座っている時も含めて、背筋を伸ばしてあげるだけでも腰への負担は軽減します。
背もたれを使って座る時は、深く腰掛けて、背中が曲がらないようにしましょう。
10.横になる姿勢にも気を付けよう
妊婦さんは寝ているだけでも身体には負担がかかってきます。
ベッドや布団も身体が沈まないものにしてあげると腰痛が楽になってきます。抱き枕を使って横向きになるのもベストです。クッションを敷いて、足を高くして寝ることも腰痛にいいでしょう。
11.腰痛を和らげる薬
腰や肩に痛みを感じた時、頼りたくなるのが湿布薬です。ですが、妊娠中は胎児への影響を考えて、薬の使用を制限する必要があります。
強力な消炎鎮痛剤を含んでいる場合、皮膚からでも微量に体内に吸収されますので胎児に影響が出てしまう恐れがあります。
消炎鎮痛剤は、患部の炎症が周囲に広がらないように、血管を収縮させて炎症作用を抑える働きをしますが、それが胎児を繋いでいる動脈管を閉じてしまうこともあり、安易に使用することは危険です。
市販の湿布薬の箱には、妊娠中の人は控えるようにと記載されているものもあります。
アレルギー症状に気をつけながら、妊娠中でも使用できる製品もありますので、専門家などにしっかり確認したうえで、購入するようにしましょう。
妊娠中に使用できないものには、強力な消炎鎮痛剤であるインドメタシンやボルタレンが含まれている製品です。実際に、妊娠中の母親が使用したことで胎児が死亡したというケースも報告されていますので、注意が必要です。
ただ、使用する量や部位などによっても胎児への影響は異なります。妊娠初期段階でも問題のない安全な製品もありますので、妊娠に気付かない時に使用してしまったからといってすぐに危険だというわけでもありません。
万一、使用中に気付いた場合でも、貼ったり、塗ったりしてしまってからすぐに洗い流せば吸収される量も少量で済みますので、大きな問題になる可能性も下がります。
薬は、便秘薬や健康食品など風邪薬だけでなくさまざまなものがありますが、服用・使用する前に記載されている事項にじっくりと目を通すようにしましょう。
なんといっても、自己判断が一番よくありません。もし、湿布薬を使用したい時はかかりつけの医師に尋ねるまたは処方してもらうか、ドラッグストアの薬剤師などに相談してみましょう。
生理前の腰痛との違い
生理前後でも腰痛を訴える人は少なくありません。妊娠3カ月ころになるとホルモンの分泌により腰痛が出てきますが、妊娠発覚する前の超初期段階ですでに痛みを感じる人もいます。それらがどう違うのかを見ていきましょう。
生理痛による腰痛
排卵直後から、生理開始2日後くらいまで続きます。背中から太ももにかけて重く鈍い痛みが走ります。子宮の裏側にかけて、ずしんとくるような重さを感じる人が多いようです。
妊娠超初期症状による腰痛
生理予定日ごろから始まり、骨盤辺りに痛みがあります。腰全体にじんわりと痛みを感じるのが長く続きます。
2つを比べてみても、見分けはつきにくく、差もほとんど分かりません。ただ、普段から腰痛を感じる人であれば、いつもと違う場所が痛むこともあります。
まとめ
「妊娠中の腰痛に悩むママ必見!その原因と対処法」いかがでしたか。
妊娠前に腰痛を持っていない人でも、妊娠して腰痛を経験する方はその4割近くを占めています。妊婦さん全体で見ても、約8割近くの人が腰の痛みを感じています。
個人によって腰痛の度合いは違いますが、ひどくなる前に痛みを少しずつ改善していくことが大切です。
原因を知り、きちんと対処することで、つらい腰痛が徐々に緩和していくでしょう。今回は、さまざまな対処法をご紹介しましたので、ご自分にあった対処法をみつけて、腰痛を撃退しましょう。
妊活中の方は、骨盤や骨盤底筋を整えるよい機会ととらえ、体幹トレーニングやヨガなどの呼吸法を試してみることをおすすめします。
監修:Etuko(産婦人科歴12年)
プロフィール:産婦人科医は「女性の一生の主治医である」と考える医師のもと看護師として12年勤務。述べ18万人の妊婦さんのサポートにあたる。筋肉、骨フェチで体幹バランス運動にて機能訓練をおこなっています。