てんかんの持病を持つ方の妊娠や出産におけるリスクと対応策

てんかんの持病を持つ方の妊娠や出産におけるリスクと対応策




“てんかん”という病気は耳にすることがあるものの、よく分からないことも多いものです。

てんかんの症状を持っている方にとっては、赤ちゃんが欲しいと思った時に、病気のことが気になり赤ちゃんを持つこと自体に不安を持つ方も少なくありません。

そこで今回は、

・てんかんとはどのような病気なの?
・これから妊娠を考える際どんな点に注意すればいいの?
・抗てんかん薬は赤ちゃんに影響しないの?

といった方に、ママご自身のてんかんの症状から、妊娠前や妊娠中の注意点や、赤ちゃんへの遺伝の可能性など、詳しくご紹介します。

てんかんの起こる仕組みってなに?

てんかんの起こる仕組みってなに

私たちの脳は、毎日絶えず全身に信号を送り、行動などを司っています。脳から送られた信号に従い、全身に張り巡らされた神経が動き出し、体内に情報を伝達していきます。

逆に、目や耳鼻などから入る情報が脳に伝達され、感情へと繋がっています。

“てんかん”はさまざまな要因によって引き起こされる慢性的な脳の疾患の1つですが、大脳の情報の指令を送る“神経細胞(ニューロン)”が過剰に反射し、異常をきたすことからおこります。

脳の機能が一時的に混乱することによって、全身の機能のコントロールができなくなり、予期しない発作やあらゆる異常反応が起きます

大脳の神経細胞であるニューロンは、通常規則正しいリズムを打ちながら行動などを司っていますが、この一定のリズムが何らかの原因によって崩れることで、神経細胞の激しい過剰発射が生じることがあります。

そのために、反復的にてんかん特有の発作が起こります。日本におけるてんかんの罹患者は、およそ100人に1人の割合でいるとされています。

てんかんの発作は単発的に起こるものではなく、繰り返し起こることも特徴の1つです。

てんかんは遺伝するの?

てんかんの持病がある方にとっては、妊娠や結婚を考える時に、赤ちゃんへてんかんが遺伝するのかどうかを心配される方も多いでしょう。

ごく一部のてんかんは、遺伝子に発病の要因があり、発作の特質や起こりやすさなどが遺伝します。しかし、遺伝しやすいてんかんは、良性のものも多く、大きくなる迄には治癒しやすいです。

一方で、その他のほとんどのてんかんは、遺伝することはないので、てんかんの方の赤ちゃんが、必ずてんかんになるとは限りません。

けれども、てんかんの遺伝は少ないとはいえ、てんかんの発作が起こりやすい体質は、遺伝することも考えられますので、心配事がある場合には、主治医や産婦人科医ともよく相談しましょう。

てんかんの種類

てんかんの種類

てんかんは、突然意識を失ったり、けいれんを起こしますが、てんかんは、30ほどの発作の種類があります。また、たくさんある発作も、大きく2つに分けることができます。

発作型のてんかんでは、脳の一部分から発作が始まる“部分てんかん発作”と、脳の全体が一気に発作を起こす“全般性てんかん発作”の2つに分けられます。

さらに、発作を起こす要因によって、病気が発症の要因になっているものには“症候性てんかん”、原因不明のものには“特発性てんかん”の2つに分けられます。

小児のてんかんの場合には、原因不明の特発性てんかんが多く、手足の麻痺や脳の障害が見られないものが多くなります。

症候性てんかん

症候性てんかんは、脳出血や脳梗塞、その他の外傷的な脳の障害や、脳の損傷によって起こるものです。小児のてんかんは、出産時の脳の損傷や乳幼児期のけが、脳症などが原因になって発症するものです。

さらに“部分てんかん”と“全般性てんかん”に分かれます。

症候性部分てんかん

脳の一部が興奮状態になり発作を起こすものです。

・側頭葉てんかん
・前頭葉てんかん
・頭頂葉てんかん
・後頭葉てんかん
・コシェフニコフ症候群

などがあります。脳波が焦点性、局在性の異常を示します。

症候性全般てんかん

新生児や乳児期に発症することの多いてんかんで、発作の頻度も高く神経症状や精神遅が見られます。

・ウエスト症候群(点頭てんかん、乳児スパスムなど)
・レノックス・ガストー症候群
・ミオクロニー失立発作てんかん

などがあります。

特発性てんかん

特発性てんかんは、脳に明らかな発症の原因が認められないもので、不明な部分も多いものです。

さらに“部分てんかん”と“全般性てんかん”に分かれます。

特発性部分てんかん

側頭部や中心部に棘波(きょくは)を持つ良性のてんかんです。

・ローランドてんかん

などがあります。

特発性全般てんかん

主に小児から若年期に発症することの多いてんかんで、比較的に症状が軽いです。

・小児欠伸てんかん(ピクノレプシー)
・良性新生児家族性けいれん
・若年ミオクロニーてんかん

などがあります。

妊娠にあたって気を付けなければいけないことは?

妊娠にあたって気を付けなければいけないことは

てんかんの治療には治療薬が用いられますが、男性の服用にはさほど問題がないのに反して、女性が治療薬を服用することには注意が必要です。

女性が抗てんかん薬を服用すると、胎児の奇形の発症率が高まることが分かっているからです。

しかし、妊娠をすることで、ごく稀にてんかんの発作を増幅させる方はいるものの、妊娠中であっても発作の回数や頻度などは、妊娠前と変わらない方がほとんどです。

抗てんかん薬は、治療や発作を抑えるためにも、服用をしなければならないものですので、勝手に服用を止めることは危険です。薬の与える影響は、誰でも心配になるものです。

抗てんかん薬を服用中の方は、計画的な妊娠や出産を心掛けましょう。そのために、妊娠を意識し始めた時には、主治医とよく相談し対応することが大事です。

持病にてんかんがある方の妊娠や出産

てんかんを発症する方の中には、妊娠や出産を考えた時に、何よりも赤ちゃんへの遺伝を心配されることでしょう。もちろん、基本的には、てんかんの持病をお持ちの方であっても、妊娠や出産をすることは可能なことです。

しかし、健康な人と全く同じようには難しいので、いくつかの注意点や、服用薬の調整など、事前に主治医との綿密な相談は必要になってきます。

てんかんの持病をお持ちの方は、主治医に妊娠を希望していることを早めに相談し、症状に応じた適切な服用薬の処方などを依頼しておきましょう。

またてんかんの方は、妊娠中にてんかんの発作が起こらないとも限りませんので、主治医と産婦人科医の連携も必要不可欠になります。出産後には、赤ちゃんのお世話のために、ママ自身の睡眠時間も不規則になりがちです。

不規則な生活やストレス、睡眠不足などは、てんかんの発作を悪化させてしまうこともあります。パートナーの方をはじめとした周囲の方の協力は必要不可欠です。

抗てんかん薬の種類と赤ちゃんへの影響は?

抗てんかん薬にはさまざまな種類があり、それぞれの症状に応じて処方されています。

抗てんかん薬が赤ちゃんに及ぼす影響は、まだまだ研究段階のところも多いですが、抗てんかん薬は、大きく分けて興奮系の細胞を抑える薬と、抑制系の細胞の働きを活発にさせる薬の2種類です。

妊娠12週頃迄は、大切な赤ちゃんの器官や臓器ができてくる時期です。つまり、薬の影響を直に受けやすい、もっとも危険な時期です。

抗てんかん薬には、二分脊椎症や口唇裂、口蓋裂などの奇形が生じることが懸念されるものもあります。もちろん、服用の仕方によって、妊娠中でも安心して使用できるものもありますので、医師の指示に従いましょう。

できるだけ複数の抗てんかん薬ではなく、1つの種類に絞った単剤化が良いです。また、抗てんかん薬にはいくつかの種類がありますが、中でも妊娠を意識した時には、一般的にバルプロ酸ナトリウムのものは控えましょう。

抗てんかん薬に使用されるバルプロ酸は、てんかん患者の約2割近くの方に処方されていますが、認知機能にも障害を及ぼすとの報告もあります。

赤ちゃんは細胞分裂を繰り返し、どんどん成長していきますが、バルプロ酸は、細胞分裂に必要な葉酸の働きを妨げることが分かっており、そのために奇形が生じる危険性が高いです。

妊娠を意識し始めたら、葉酸を十分に摂りましょう

おなかの赤ちゃんの成長には、葉酸が必要不可欠ですが、てんかん薬の中には、葉酸の働きを妨げるものも少なくありません。

妊娠を意識し始めた時から、積極的に葉酸を多く含む食品を食事に取り入れるように心掛けましょう。

また、抗てんかん薬を服用している方は、日常の食生活だけでは葉酸が十分に摂取できないので、サプリメントなどを上手に利用するのもおすすめです。

葉酸は水溶性のビタミンのため、まとめ食べをしておくことができません。毎日必要量をしっかり摂らなければならないのです。

特にてんかんの方は、バランスの良い食生活を心掛けることはもちろんですが、葉酸など栄養素にも意識をした食生活を送りましょう。

葉酸は、ブロッコリーやほうれん草などの他、納豆や豆乳などの大豆製品にも豊富に含まれています。大豆製品は、高齢出産の方には欠かすことのできないイソフラボンも豊富ですので、積極的に摂りたい食品です。

ママが、妊娠中に発作を起こしたら?

ママが、妊娠中に発作を起こしたら

妊娠中には、おなかの赤ちゃんへの影響を考慮し、抗てんかん薬の服用を中止することも多いですが、万が一妊娠中にてんかんの発作が起こった場合には、赤ちゃんへの影響も避けることは困難になります。

全身にてんかんの発作が起こった場合には、ママの呼吸も困難になり、赤ちゃんへの酸素の供給も難しくなるからです。

赤ちゃんへの酸素供給が低下、もしくはストップしてしまうと、赤ちゃんが低酸素状態になり、最悪の場合には、胎児死亡の危険も大きくなります。

けいれんを起こした場合には、全身に力が入ってしまい、おなかにも必要以上に力が入ってしまうために、おなかに強い張りを感じてしまったり、急に意識を失い倒れてしまったりすることもあります。

ですので、抗てんかん薬を勝手な自己判断で止めてしまうことも危険です。そのために、妊娠中であっても 勝手な自己判断で薬を止めてしまうことなく、主治医の指示に従いましょう。

また、てんかんの発作は、体調の優れない時に起こることが多いとされています。毎日のバランスの良い食事を心がけると共に、十分な睡眠と休息、水分の補給など、基本的な生活習慣を見直してみることも大切です。

赤ちゃんや小児のてんかんの主な原因は?

赤ちゃんや小児のてんかんの主な原因は

赤ちゃんや小児が発症するてんかんの主な要因は、遺伝的要素の強い“特発性てんかん”と、大脳が傷つくことによって発症する“症候性てんかん”に大きく分けられます。

特に新生児の赤ちゃんが発症するてんかんには、妊娠中や分娩時に何らかの原因によって大脳が傷ついてしまい(分娩時頭部外傷)、それらが要因になってけいれんを起こしてしまうことが多いです。

その他にも、先天性の脳の奇形(先天性奇形)や“ライソゾーム病”や“ガラクトース血症”などのように、先天的に代謝に異常(先天性代謝異常)が見られる場合にも、てんかんを発症しやすいです。

高齢出のリスクの中に、てんかんもあるの?

高齢出産のリスクとしては、産まれるお子さんにダウン症などの先天性異常や、ママ自身の妊娠高血圧症候群の発症の確率の高さなどが挙げられます。

男性が高齢のカップルの場合には、自閉症などの障害の他に、てんかんになる確率も高まるという報告もあります。また、ダウン症に伴う合併症として、てんかんが挙げられます。これは、“点頭てんかん”といわれます。

授乳と抗てんかん薬との関係は?

無事に出産を終えると、抗てんかん薬を服用している方は、授乳と抗てんかん薬の移行について気になります。

主治医や産婦人科医の指導のもと、妊娠中に抗てんかん薬を服用していた方は、赤ちゃんへの影響やママご自身の状況を考慮して処方された薬ですので、母乳を通しての赤ちゃんへの影響も心配はありません。

もちろん、ママの食事や服用薬は、母乳に影響を及ぼすものではありますが、離乳食に移行し始める頃には、母乳を飲む量が減るのに比例して心配も減ります。

ただし、抗てんかん薬の中には鎮静作用の強いものもあり、赤ちゃんに移行することで、眠りに入りやすい状態が続くこともあるので注意が必要です。

特に注意が必要なものは、フェノバールやベンゾジアゼピン系のものです。

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