妊娠していると、「安産」や「難産」という言葉を良く耳にしますが、安産や難産には何か定義があるのでしょうか?
一体、どんなお産が安産で、何が異なると難産になってしまうのでしょうか?
そこで今回は、
・安産と難産の違いとは?
・安産で出産するためには?
といった方に、安産や難産について、少しでも楽なお産になるためにできることなどを紹介します。
この記事の目次
安産と難産の違い
安産、難産という言葉に、実は明確な基準はありません。人それぞれ出産の痛みやかかった時間などの感じ方は異なりますので、安産と思うか難産と思うかは、妊婦さん自身の感じ方も大きく影響しています。
安産
お腹の赤ちゃんの出産予定日が近付いてくると、誰しもできるだけ楽なお産になれば良いと思うものです。
安産というと大きな異常もなく妊娠期間を過ごし、しかも、手術などの人的援助の無いお産の場合には、安産と考えられることが多いです。
難産
一方、難産といわれるお産は、一般的には正常分娩にはならず、人為的な手助けを必要としたお産や、時間的にもかなり長い時間を要したお産のことをいうことが多く、例えば、帝王切開術で出産した場合や、会陰縫合などを行った場合にも、難産と区分する方もいます。
難産の場合には、時間や母子への負担がかかればかかるほど、母子共に危険が増してしまう可能性が高くなるということです。
どうしたら安産になれるの?
安産というと、昔からの俗説では「骨盤の大きい人は安産型」とか、「安産は親から遺伝するもの」などといわれることがありますが、安産になるとされているもので、根拠があるものもいくつかあります。
1.骨盤の大きさ
2.適切な体重管理、太り過ぎ予防
3.呼吸法の習得
4.冷えの予防
5.適度なウォーキング
もちろん、すべてが当てはまらないと、「安産とならない」というものではありませんが、妊娠生活中に意識しておくことで、少しでも楽にお産が進むでしょう。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
骨盤の大きさ
安産になるための条件として昔から言われている骨盤の大きさですが、実際に骨盤の大きさと安産とは、関係があるのでしょうか。
骨盤は、ご存知の通りに赤ちゃんを10ヶ月もの間支え、子宮全体を包んでくれています。安産になるためには、赤ちゃんが楽に通れる大きさが必要です。
骨盤は、赤ちゃんがお腹から出てくる際の通り道で、「骨産道」と呼ばれています。骨産道が広く広がる場合には、当然のことですが、赤ちゃんがスムーズに出やすくなります。逆に、赤ちゃんの頭の大きさと骨盤の広さが合わない場合には、当然のことですがお産は困難になってしまいます。
もしも、骨盤大きさと赤ちゃんの頭の大きさの合わない児頭骨盤不均衡(CPD)の場合には、分娩の進行が妨げられてしまうために、お産に必要以上の時間と負荷がかかってしまい、帝王切開になってしまうことが多くなります。骨盤の大きさは、安産に大いに関係しているといえます。
残念なことに、骨盤の大きさは自分自身でどうにかできるものではありません。もちろん、お尻の大きさ=骨盤の大きさではありませんので、見た目にお尻の大きな人が安産かというと、そういう訳ではありません。
適切な体重管理、太り過ぎ予防
妊娠中には、赤ちゃんの体重と羊水、胎盤、血液の増加など、自分の体重の増加分などを含めても、8~12kgの増加が理想だといわれています。増えすぎた体重によって出来た脂肪は、体の様々な部分についてしまいます。
もちろん、産道に脂肪が付いてしまうと、赤ちゃんが通る道を狭めてしまいますので、お産は困難になってしまいます。
また、太り過ぎによって、子宮の収縮が鈍くなってしまい、陣痛も起こりにくくなってしまうことがあります。そのために、お産に余計な時間がかかってしまうことが考えられます。
安産のためには、太り過ぎに気をつけたいものです。また、体重の増え過ぎは、妊娠中毒症など、その他さまざまな病気を引き起こす原因の1つになっていますので、特に注意が必要です。
過度な体重の増加は、産後の体重の戻りや、その後の健康にも影響を及ぼします。安産のためには、体重管理は欠かせないのです。
呼吸法の習得
出産の際には、呼吸法もかなり影響を及ぼします。赤ちゃんに新鮮な空気を送るためには、お母さんが常にきちんと呼吸できることが大切です。
呼吸が上手の行われないと、お腹の赤ちゃんにも、からだ全体に送られる酸素の量も少なくなってしまいます。
また逆に、呼吸が早くなりすぎて、過呼吸になってしまうこともあります。妊娠中から呼吸法をしっかり身につけておくことで、お産の進行に合わせてゆったりと呼吸することができ、緊張も減らすことができます。
また、呼吸が上手くいくと出産の緊張も和らぎ、緊張が少ないことで、体全体も硬くなってしまうことなく、落ち着いて医師や助産婦さんの導きのもと、お産を進めることができるようになります。そのため、安産につながると考えられます。
出産時の呼吸法で有名な「ラマーズ法」などを妊娠時から練習しておくことで、出産時の不安も和らげることができます。
冷えの予防
妊娠中には冷えは大敵だということで、誰もが気を付けていることでしょう。妊娠中はお腹の赤ちゃんを支える骨盤にも負担がかかり、骨盤周辺の筋肉や靭帯の動きや、血行も悪くなりがちです。そのために、妊娠中には特に冷えやすくなります。
しかし、冷えは、お産自体にも大きくかかわってきます。冷えることで、血流が悪くなりますので、当然のことながら、子宮内への血流も悪くなってしまいます。
そのために、陣痛を感じにくい「微弱陣痛」になったり、お産に時間のかかってしまう「遷延分娩」になりやすくなったりします。
分娩後の産褥期には子宮の収縮がみられますが、冷えが原因で、「後陣痛」を感じやすくなることもあります。
適度なウォーキング
腰回りをはじめ、下半身の筋肉や靭帯が柔軟で、関節も柔らかく開閉が楽であることも大切な要素です。
適度なウォーキングは、健康を保つ秘訣だともいわれますが、お産が楽に行えるようにするためにも、効果があるとされています。
特に有酸素運動でありながら、程度を加減して行うことができますので、体調に合わせたウォーキングを行うことも良い方法です。現代では生活様式が変わり、立ったり座ったりする機会も少なくなっています。そのため、骨盤を開く機会も極端に減っています。
骨盤を開く運動や、骨盤内及び周辺の筋肉や靭帯を動かすことは、骨盤の柔軟性を保つためにも必要なことです。
ウォーキングでは、骨盤の動きも伴いますので、お産を考えた上でもとても有効的です。
安産には気持ちの安定が大切
出産は誰もが緊張しますし、色々なことが頭をよぎります。ましてや、初めての出産でしたら、なおのことでしょう。
陣痛が始まってから極度に緊張してしまうと、必要以上に体に力が入ってしまい、お産をスムーズに進めることが難しくなりますので、安産のためには逆効果です。
気持ちがリラックスしていると、自然に体の緊張もほぐれ、体全体やお母さんの気持にも柔軟性が増してきます。笑顔と怒った顔では、顔の緩みやからだ全体の柔軟性が違うことからも分かるはずです。
リラックスし、気持ちの上でもゆったりとお産が進められるかどうかで、安産になるか難産になるかの感じ方も違ってくるでしょう。
妊娠中から医師や助産婦、看護師にもお産に対する不安や疑問を伝え、不安をできる限り取り除き、心と体の準備を整えておくことで、ストレスの極力少ない状態で臨みたいものです。それが、1番の安産への近道なのかもしれません。
監修:Etuko(産婦人科歴12年)
プロフィール:産婦人科医は「女性の一生の主治医である」と考える医師のもと看護師として12年勤務。述べ18万人の妊婦さんのサポートにあたる。筋肉、骨フェチで体幹バランス運動にて機能訓練をおこなっています。