女性にとって恐れるべき病気のひとつに卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)があります。卵巣嚢腫は症状が出にくいというのが特徴で、気がついたときには卵巣嚢腫そのものが非常に大きくなっているケースがあります。
そこで今回は、
・卵巣嚢腫はすぐ気付くことができる?
・卵巣嚢腫はどんな症状があるの?
・卵巣嚢腫にならないよう自分で気をつけることは?
といった方に、卵巣嚢腫の原因や卵巣嚢腫の種類、症状などについて詳しくご説明します。
この記事の目次
卵巣嚢腫は症状が出にくい
卵巣嚢腫とは、卵巣に液体成分がたまり、腫れている状態のことを指します。
卵巣がんを思い浮かべることが多いかもしれませんが、卵巣にできる腫瘍の9割以上は良性のもので、その中で一番多いタイプを卵巣嚢腫と呼び、症状が出にくい病気のひとつです。
卵巣は沈黙の臓器ともいわれており、痛みそのものを強く感じることや、すぐに違和感を感じることがありません。
ある程度、嚢腫そのものが大きくなってしまってから症状があらわれ始めるため、発見後すぐに手術になることがあります。少しでも症状を察知した場合には、すぐに受診しましょう。
卵巣嚢腫の症状
卵巣嚢腫はどのような症状があるのでしょう。卵巣嚢腫の症状5つをあげてみました。
腹部膨満感
食事をしたあとに苦しくなるといった膨満感を頻繁に感じるのは、卵巣嚢腫として非常に大きな特徴です。
このような症状は単純に食べ過ぎたというケースではなく、おへそよりも下の部分に膨満感を感じることが多いので、卵巣嚢腫の症状としては比較的分かりやすいです。
過多月経
月経の出血量が増えるといった症状も、卵巣嚢腫でよく見られます。
嚢腫そのものが大きくなると大量出血をおこすこともあり、レバーのように固まった血液が出るいった特徴もあります。また性行為があったあと、出血が見られます。
下腹部痛
頻繁に下腹部の痛みを感じる場合、卵巣嚢腫の疑いが強いです。
卵巣嚢腫が片側だけできたときは下腹部の痛みも片側のみ、両側に嚢腫ができたケースになると下腹部全体が強く痛みます。
下腹部の痛みは人によって、さらには嚢腫の大きさによって差がありますが、なんとなく下腹部が重たいような痛みを感じるケースが多いです。
便秘、頻尿
卵巣の腫瘍ができることによって子宮全体や腸、さらには膀胱と多くの臓器を圧迫され、便秘や頻尿に悩むママも少なくありません。
食事などで改善できないケースが多く、便秘改善に取り組んでいても、なかなか状況が変わらないときには卵巣嚢腫を疑いましょう。
腹部の腫れ、腹囲の急激な増加
体重には大きな変化がないにもかかわらず、腹部だけが大きく腫れているというケースや、ウエスト周りやお腹周りが極端に大きくなったというケースも卵巣嚢腫にある特徴的な症状です。
これまではスムーズに履けていたスカートやパンツなどが突然きつくなり、まったく履けなくなってしまうというケースもあります。
卵巣嚢腫が大きくなるにしたがって腹部が腫れることは、決して珍しいことではありません。
卵巣嚢腫の発見のタイミング
卵巣嚢腫を発見するのはどのようなタイミングなのでしょうか。
前述したような症状があらわれ、受診するのはもちろん大切ですが、症状が出てもさほど気にせず単なる生理痛と思ったり、少し様子をみるといったことから発見が遅れることも多いです。
卵巣嚢腫が発見されたあと、卵巣の中にどのような成分が蓄積されているのかを詳しく検査しなければならないため、卵巣嚢腫の診断後は精密検査をすることもあります。
異常を感じ受診する
もっとも多いのが、自分の体になんらかの異常を感じ受診をして、その場で卵巣嚢腫が発見されるケースです。
問診だけでなくエコー検査などを行いながら、卵巣の大きさを計測し、卵巣嚢腫になっているかどうかを確認します。
妊娠の検査で発覚する
妊娠すると必ず病院に出向くことになりますが、このときにいくつかの検査をします。当然ですが触診なども行い、さらにはそこで卵巣の大きさもチェックしますので、卵巣の腫瘍が発見されるケースもあります。
それまでは特に異常を感じていなくても、妊娠の検査で受診したら卵巣嚢腫になっていたというケースも少なくありません。
定期健診で発見される
1年に1回程度子宮の検査を行っている方は、この定期健診で卵巣嚢腫が発見されます。
子宮がんや卵巣がんなどの検査ばかりではなく、卵巣嚢腫についてはエコーでチェックするだけで簡単に卵巣の大きさに異常が出るため、ここで卵巣嚢腫であることがわかります。
卵巣嚢腫の種類
卵巣嚢腫は種類がひとつではなく、複数に分かれています。それぞれで特徴が違っていますので、以下でご紹介していきます。
漿液(しょうえき)性嚢腫
思春期を迎えた女性であれば特に年齢などを問わず、卵巣嚢腫の中でももっとも多い症状です。
卵巣からは漿液という透明な液体が分泌されますが、この透明な液体が卵巣の中に蓄積してしまう症状です。
粘液性嚢腫
粘度の高いゼラチン状の液体が卵巣の中に溜まってしまう症状で、閉経後の女性に多くみられます。
また、中に蓄積されていく液体そのものも徐々に増えていくので、卵巣そのものが肥大してとても大きくなってしまいます。
卵巣の大きくなるスピードも比較的早いため、腹囲の急激な増加などがあれば、こちらを疑ってみましょう。
成熟嚢胞性奇形腫(皮様性嚢腫)
卵巣嚢腫は胚細胞にできるもので、毛髪や歯などといった組織を含んだドロドロの液体が卵巣の中に溜まってしまいます。
片側だけでなく両方の卵巣に同時に溜まってしまうこともあり、20代から30代の女性に多いといわれます。
チョコレート嚢腫
チョコレート嚢腫は20代から30代の女性に多いといわれており、卵巣の中に子宮内膜症が発生してしまう症状です。
月経が起きるたびに血液が卵巣内に蓄積してしまい、嚢腫そのものが作られ、どんどん大きくなってしまう特徴を持ちます。
このとき卵巣内に溜まっている血液や子宮内膜などが、まるでチョコレートのような色をしていることから、チョコレート嚢腫といわれています。
近年では月経におけるさまざまな異常を持っている若い女性も増えてきており、月経のサイクルが不安定になってしまうことがあれば、子宮内膜症とともにこちらの卵巣嚢腫も注意しましょう。
卵巣嚢腫の原因は?
卵巣嚢腫になってしまう原因は、複数の理由が考えられています。具体的にどんな原因が卵巣嚢腫を作ってしまうのでしょうか?
奇形
卵巣嚢腫の一番の原因は、軟骨や毛髪、皮脂などが卵巣の中に溜まってしまうことです。卵巣嚢腫患者のなかでも全体の半数以上を占めている原因となっており、正式には成熟嚢胞性奇形腫といいます。
片側の卵巣だけでなく、両側の卵巣も同時に発生することもあり、妊娠中に発見されることも珍しくありません。妊娠中に発見された場合には、可能な限り妊娠初期の段階で手術を行います。
子宮内膜症性
子宮の内膜が卵巣の内側で増殖してしまうことが原因で卵巣嚢腫になります。そのため、月経周期に合わせて出血を繰り返し、子宮内膜が卵巣の中に血液や粘液などが溜まってしまい、徐々に大きくなることが知られています。
排卵回数の増加
近年では少子化がひとつの問題になっていますが、少子化は出産する子どもの数が少ないことを指しています。
妊娠期間中は排卵の回数が抑えられますが、出産する女性が減っているため妊娠期間を過ごす女性が少ないのです。
その分排卵回数が多くなり、不要物などが卵巣に蓄積してしまい、卵巣嚢腫になるといった原因も考えられています。
卵巣嚢腫の治療法
卵巣嚢腫が見つかった場合は、必ずしも卵巣を摘出する、または切除するといった方法ばかりではなく、経過療法としてしばらくの間は卵巣嚢腫が大きくなることを防ぎ、様子を見るケースもあります。
また子宮内膜症などによって卵巣嚢腫ができてしまった場合には、子宮内膜症を改善するためのお薬が処方されることもあります。
腹腔鏡下摘出手術
卵巣嚢腫が5センチ以下だった場合は腹腔鏡下手術を行い、卵巣内に溜まっている液体や不要物などを取り除くことができます。
また、不要物を取り除くだけでなく内視鏡で卵巣内部を掃除するといった方法で腹腔鏡下手術を行うこともあります。
卵巣の大きさや卵巣の中に蓄積されている成分がどんなものかによって、切除する部分なども変わってくるためドクターの指示を待つのが1番です。
開腹手術
卵巣嚢腫が5センチ以上のケースや、腸や膀胱などといった臓器との癒着が起きてしまうリスクが高いときには、開腹手術を行う場合もあります。
卵巣嚢腫は単純に卵巣そのものが大きくなってしまうだけでなく、癒着を起こすといった懸念がありますので、必要に応じて開腹手術となることもあるのです。
卵巣嚢腫はがんや軸捻転のリスクもある
卵巣嚢腫はいくつかの治療法も存在しており、早期に発見できれば治療方法や施術方法に関しても、比較的リスクの少ないものを選択できます。
しかし、卵巣嚢腫に気がつかないまま放置していると、卵巣がんになってしまうリスクやその付け根部分が捻れてしまう軸捻転を起こすリスクもあります。
軸捻転の痛み
特に軸部分の捻転を起こすと、卵管をはじめとする子宮内にも大きな影響があり、その後不妊に悩むこともあります。
軸捻転を起こしてしまうと、他の部分と癒着を起こすといったリスクだけでなく、とにかく耐え難い痛みに襲われるため、その場で動けなくなってしまうことがあります。
万が一1人でいるときにこのような症状が起きてしまったら、誰かに助けを求めることも難しくなります。
症状が出てきたときはもちろんですが、症状が複数該当する場合でなくとも、なんらかの異常を感じた時はまず受診してみるのが1番です。
異常があれば遠慮せずに受診する
卵巣嚢腫は早期発見ができ、適切な治療やライフスタイルの改善をすることにより、卵巣嚢腫が小さくなる場合があります。ですが、婦人科での検査が必要なため抵抗を感じる女性もいます。
しかし、女性であればなんらかの異常を感じたら、すぐにでも婦人科に行きましょう。妊娠したときや生理に異常が見られたときばかりではなく、下腹部に痛みを感じたり不正出血があったら積極的に診察に出向くことを心がけるのが一番です。
卵巣嚢腫は症状が出にくい病気です。おかしいなと思ったときにはすぐに検査をしましょう。早く発見すればするほど、がんや軸捻転などのリスクを軽減することができます。
特に若い女性の場合、卵巣がんになるとステージの進行も早いとされているため、悪性腫瘍になる前に、卵巣腫瘍を見つけ適切な治療をすることが大切です。