産後に行う産褥体操をご存知ですか?よく産後1カ月くらいはベッドの上で安静にしていなくてはいけないといわれますが、産後のダイエットのためにどの程度動いても良いのか不安もあることでしょう。
そこで今回は、
・産褥体操ってどういうもの?
・産褥体操はどのような効果があるの?
・産褥体操はいつから行うの?
といった方に、産褥体操について詳しくご紹介します。一体、産褥体操とはどんな体操なのでしょうか?一緒に見ていくことにしましょう。
この記事の目次
産褥体操って何?
産後は、妊娠や分娩で変化した体の筋肉や機能が、ホルモンの変化によって徐々に回復していきます。
このように正常な機能に戻っていく期間を産褥期と呼び、個人差はあるものの、だいたい6~8週間ほどかかります。
産褥体操はそんな母体の自然な回復力をフォローするのに非常に適した体操です。出産直後からでも簡単な動きを始められるので、取り組みやすい運動です。
体操をする目的
産後は、なんといっても優先すべきは母体の回復と新生児のお世話が優先の生活となります。
しかし、それだけになってしまうと動きが限定されてしまいます。
全く動かないというのも子宮の収縮が遅れるなどの原因となり、身体的にも精神的にも好ましくありません。
産褥体操の目的は体型を元に戻すことはもちろん、体の中の機能を整える事を一番に考えた体操です。骨盤の歪みを戻す効果もあるので、産後一番に始めることをお勧めします。
寝ながらでも行えるような無理なくできる運動のため、激しいトレーニングではありません。焦らずゆっくり体を動かしましょう。
産褥体操の効果
産後からでも自分のペースで簡単にできる産褥体操。骨盤の歪みの改善以外にも、産後の早期回復や、リラックス効果が期待できます。それぞれ見ていいましょう。
産後の回復に最適!
産褥体操のメリットは、やはり体の機能を回復する動きを促す効果があることでしょう。
生活の運動不足を補うことから、妊娠、出産で伸びてしまった筋肉を再び引き締める事ができます。
特に、産後の体は骨盤の位置以外にも産道付近の筋肉は伸びてしまいがちです。これは産後ならではの変化なので通常のダイエット運動では効果がありません。
無理をして行うと筋肉だけでなく、緩んでしまった子宮の回復も遅らせてしまうことに繋がるのです。このような産後ならではの回復こそ、産褥体操がよりダイエットに効果を発揮するといえる点です。
リラックス効果
体の機能の変化もそうですが、精神にも大きく影響します。妊娠するとホルモンの分泌量が急激に変化するため、精神的に不安定になることも多くなります。
マタニティブルーはその中でもっとも典型的なもので、場合によっては育児ノイローゼになってしまうこともあります。産褥体操というのは、気分転換という意味でも良い方法です。
ストレスの発散にもなり、何より産後の疲れた体をリラックスさせる効果もあります。
ストレスはダイエットの妨げにもなります。旦那さんと一緒にできる体操もあるのでコミュニケーションを取るきっかけにしてもいいでしょう。
産褥体操に取り組む前に
産褥体操を行う際には、必ず助産師さん、もしくはお医者さんに相談してから行って下さい。
体に負担がない動きとはいえ、お産直後や、特に帝王切開など特別な処置を受けた方は傷口が痛む場合があるので、注意が必要になります。
確認をしっかりした上で、無理のない負荷・回数で始めることが大切です。まずは産後の体を労わって、リラックスしながら体を動かしていきましょう。
早い段階から体を動かしておけば、産後ダイエットの効果も期待できます。
産褥体操のやり方
産後すぐに始めることを勧めましたが、早め早めに全てやり通してしまうと、やり方によっては体に負荷を与えるだけで逆効果になってしまいます。
無理なく行うことがこの体操では一番大切なことですので、産後◯日〜という目安を参考に、できる範囲で行うようにしましょう。
腹式呼吸(仰向けの姿勢/呼吸法) 産後1・2日目~
最初にできるのは腹筋運動です。運動といっても仰向け姿勢になって腹式呼吸をするだけです。お産の疲労や緊張をしずめ、心と体をリラックスさせる効果があります。
1.仰向けに寝て、両膝をまげて腰幅に広げます
2.次に、両手をお腹の下部(へその下)に当てて、口から息をゆっくり吐きながらお腹をへこませます
3.鼻から息を吸いながらお腹を膨らませましょう
→2・3を繰り返します
この体操はパパも手伝える体操です。手をお腹においてもらい、その手を呼吸の力で持ち上げたり下げたりしましょう。手をおいてもらうことで、腹筋を意識しながら行うことができます。
足首体操 産後1・2日目~
足首を動かすことで血行の流れを良くし、むくみやだるさを取ります。良いストレッチにもなりますし、腹筋や子宮の回復にも役立ちます。
1.足を伸ばし腰幅に開き、両足の足首を曲げたり伸ばしたりします
→この動作を優しく丁寧に繰り返し行いましょう。
この体操のポイントは、産後翌日からできるところです。簡単にできるからこそ、ゆっくり丁寧に行う必要があります。
母乳体操 産後2日目~
授乳前に行うと母乳の出が良くなる体操です。座ってもできる動作を取り入れているので、体調と相談しながら、ゆっくり行いましょう。
1.最初に両腕を曲げ、ひじで脇をパタパタと軽く8回叩きます
2.肘で胸を下からすくい上げるように、大きく肘を3回まわします
3.次に、腕を後ろから前に大きく3回まわします。この時、腹筋を動かすことを意識しましょう
→1・2・3の順に繰り返します
この体操は、最初に胸をパタパタさせる事によって乳腺を刺激しています。鳥が羽ばたくような気持ちで行ってみましょう。
腕廻し腹筋 産後3・4日目~
この頃になると、赤ちゃんとのふれあいも増えてきます。ここで腕廻しも加える事で、腹筋を鍛えると共に慣れない抱っこや授乳で起こる肩や腕のコリもほぐす事ができます。
1.仰向けに寝て、両ひざを曲げて腰幅に開きます
2.手の指を組んで息を吐き、それと同時に胸・お腹をさすりながら腹筋を使い、円を描くようにゆっくりと動きます
→1・2を繰り返します
二の腕を廻し上げる時に頭と肩を上げ、お腹を引き締めるイメージをしながら腹筋をしましょう。産後3日目からできる体操ですが、無理せず自分のペースで行うことが大切です。
ふくらはぎのストレッチ 産後3・4日目~
ふくらはぎに重点を置いたストレッチを行います。血液の循環が良くなり、足のつりの予防にもつながります。
1.壁に手をつけます
2.足を腰幅に広げ、足を前後に開きます
3.前の足のひざを曲げ、後ろ足はひざを伸ばして、壁を押すようにふくらはぎをストレッチします
→同じように、もう片方の足も行います
3の時、後ろ足のかかとは床につけ、対して前の足はできるだけつま先よりでないようにします。後ろ足が外側を向いたり、そり身になったりお尻を突き出さないように注意して行うことがポイントです。また、壁を支えにするのではなく、パパに支えてもらってストレッチを行うこともできます。
腰のツイスト 産後3・4日目~
腰をねじる運動です。腰痛の予防にも繋がるだけでなく、産後にぽっこりしてしまったお腹周りのシェイプアップにもなります。
1.仰向けに寝て足を揃え、両ひざを立てます
2.立てた膝を、右へゆっくり倒します
3.もとの姿勢に戻り、今度は反対側へ倒します
→2・3の動作を繰り返します
腰のツイストをする際は、軽くタオルを絞るようなイメージで行うと上手く動くことができます。立てた膝を倒すときに顔を反対側へ向けることでも、よくねじる事ができます。
膝の曲げ伸ばし 産後5日目~
重力に負けない筋力をつける体操です。膝やももの運動と同時に骨盤底筋も締める効果があります。
1.足を腰幅に開き、ゆっくりひざを曲げ、腰を10cmほど落とします
2.ゆっくりとひざを伸ばします
→この動作を繰り返します
ひざを伸ばした時に、肛門を締めるようにして骨盤底筋を締めると効果的です。注意しなければいけないのは、ひざがつま先よりも前に出ないようにすることです。それさえ気を付けていれば、スクワットほど曲げないので気軽に行うことができます。
猫のしっぽふり 産後5日目~
身体の横側を伸ばしたり縮めたり、体側に対しての運動です。腰痛の予防にも効果的なだけでなく、出産に大切な腹筋の運動になると共に脇の筋肉の運動にもなり、産後のシェイプアップに繋がる体操の1つです。
1.四つんばいになって手と足を腰幅に開き、猫のポーズを取ります
2.そのままの体勢で、おしりを左右へ振ります
→2の動作をゆっくり繰り返します
おしりを左右へ振る際には、腰をそらさないよう気を付けましょう。おへそを中心に楽器のアコーディオンになったつもりで体側(脇腹)を伸ばしたり縮めたりするイメージで行います。
産褥体操は自分の体調に合わせて
産褥体操は自分の体調、気分に合った組み合わせで行うのが一番です。
ご紹介した体操を気分に合わせて、いろいろな組み合わせを試してみましょう。
ただし、何度もいうように体の調子を整えることが目的ですので、痛みを感じた場合や、気分が優れない時は絶対に行わないようにしましょう。
骨盤を締めてダイエットを目的とするのは二の次です。
産褥体操の注意点
産褥体操を効果的に行うには、次の2点に注意して行いましょう。
体操よりも体を優先
簡単な運動とはいえ、程良い疲れが体にやってきます。少しでも早く調子を良くしていきたいものですが、疲労を感じたり、赤ちゃんと睡眠が一緒に取れそうな場合はそちらを優先しましょう。
体操を行わない日があったところで効果が半減するというものでもありません。赤ちゃんのお世話も加わった生活は、ほぼ24時間活動しているような状態になってしまっている時もありますから、体調管理には十分気を付けましょう。
時間帯も食後すぐ行わないことをお勧めします。休息を取って体力を維持することも大切です。
無理をしない
産後の疲れが取れてきても、次に育児の疲れがやってきます。産褥体操は育児の合間でもできますが、無理をしていては意味がありません。
体の疲れが抜けなくなってしまうだけでなく、数日で止めてしまう場合も出てきます。そうならない為にも回数を2~3回にする、体操計画表を作るなどして、継続できるペースで行いましょう。
一気に多くの時間を費やして体を動かすよりも、少しずつでも毎日継続する方が、体の回復を無理なく進めることができ、効果があらわれやすくなります。
産後のダイエットも大切ですが、まずは体に負担のないよう、短い時間で計画的に行うようにしましょう。
監修:Etuko(産婦人科歴12年)
プロフィール:産婦人科医は「女性の一生の主治医である」と考える医師のもと看護師として12年勤務。述べ18万人の妊婦さんのサポートにあたる。筋肉、骨フェチで体幹バランス運動にて機能訓練をおこなっています。