妊娠は約10か月という長い期間続くことになります。その妊娠期間に暑い夏を迎えるという方も多いと思います。妊娠すると妊娠していないときよりも、暑がりになり余計に暑さが辛いという方も少なくありません。
特に妊娠初期にはこの体の熱さにも慣れていないため、「どうしてなの?」「どこか具合でも悪いの?」と不安を覚えている方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、
・妊娠するとどうしてこんなに暑がりになるの?
・妊娠中暑くていられない、クーラーをずっとつけていて良い?
・あせもができたけど市販の薬で大丈夫?
・暑くて寝れない、快眠対策を教えてほしい!
といった方に、妊娠中の暑さを感じる理由と、暑がりになってしまったママが自分で過ごしやすくできる方法や暑くても寝やすくする対処法について詳しくご説明します。
この記事の目次
妊娠初期はどうして暑い?
基礎体温などを付けていた方はわかると思いますが、妊娠すると基礎体温が上昇します。
いわゆる高温期と呼ばれるもので、妊娠していない状態よりわずかですが体温が0.2度から0.3度ほど上昇します。
卵子が着床することで妊娠となり、赤ちゃんを育てやすくするために黄体ホルモンが分泌され、高い体温を維持するのです。
この高温期の時期は個人差もありますが、胎盤の完成する4か月ごろまで続きます。
つまり、妊娠初期と呼ばれる間中妊娠していないときよりも体温が高くなるというわけです。これが、妊娠初期に妊婦さんが暑いと感じる理由でもあります。
暑いと感じたら冷やしても良い?
妊娠初期に顔がほてったり、体が熱く感じる、足の裏が熱いという感じる方もいることでしょう。
妊娠初期の季節が冬という場合は問題ないですが、夏などの暑い季節には不快感を覚える方も少なくありません。
そうしたとき少しでも冷やして快適に過ごしたいと考えるものですが、妊娠初期の体温の上昇は、先ほど述べた通り赤ちゃんを育てやすくする役割があります。
クーラーの利きすぎる部屋に長時間いたりすることは、決して赤ちゃんのためには良くありません。
クーラーなどを使用する場合は、妊婦さんが過ごしやすいと感じる程度の温度に抑えることも大切です。
暑すぎると感じる方が良いの?
では、逆に夏で暑くてどうしようもないのに、「我慢した方が赤ちゃんのためには良いの?」と思うかもしれませんが、これも逆効果です。
妊娠初期はつわりなどの症状がある方が多く、ただでさえ体力の衰えている時期といえます。
この時期に夏バテや脱水症状になってしまっては大変です。妊娠初期は敏感な時期ですから、適度に部屋の温度も下げるなどして、体力を暑さで奪わないようにする工夫も必要です。
また、体温の高い妊婦さんは、夏は普段より汗を大量にかくことがあります。
きちんとこまめにタオルで拭けていれば問題ないことですが、汗を放置すると時にはあせもができてしまうことも考えられます。あせもは一度できてしまうと、しつこい皮膚疾患です。
我慢を続けるとあせもは広がってしまい、かゆみでかきむしることでグジュグジュと患部が悪化してしまします。
妊娠していなければ、市販の薬なども使用できますが、妊娠している場合医師がきちんと処方してくれる薬が安全です。
ですが、安全のために弱い薬だと治療が長引き、完治するまでどうしても時間がかかってしまいます。こうしたトラブルも厄介ですよね。
妊婦さんが健康でいることは赤ちゃんにとっても大切なことです。暑くすれば赤ちゃんのためになるというわけでは決してありません。
暑さによるストレスは、赤ちゃんにとってもマイナス
暑いと感じることは、肉体的に色々な症状が出てくるばかりではなく、精神的にもダメージを受けることがあります。
暑さが続くことで妊婦さんがストレスを感じてしまっては、赤ちゃんにとって良いこととはいえません。
ストレスが妊婦さんにとってどのような影響を与えるかということは詳しく証明されていませんが、ストレスとホルモンには深い関係性があることがわかっています。
ストレスを感じることで何かしらホルモンに影響を与えることは間違いないのです。
個人個人によってその影響は異なるようですが、ホルモンの分泌が減少してしまったり、逆に過剰に分泌されてしまったりします。
妊娠を維持するために分泌されている女性ホルモンが乱れてしまうのは問題です。
また、ストレスは同時に睡眠不足を引き起こしてしまうケースもあります。体調不良の続く妊娠初期に、睡眠不足になってしまうと体力にも多大なるダメージを与えてしまいます。
ママの健康と安定を維持するためにも、赤ちゃんのためだからといって無理に暑さを我慢するということはしないようにしましょう。
暑い夏の妊婦さん対処法
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暑い夏を乗り切るためには妊婦さんにもそれなりの暑さ対策が必要です。
もちろん猛暑日には適温でクーラーを使用しましょう。おおよそ27~28度位が適温です。くれぐれも冷やしすぎには気を付けましょう。
ただし、外出先では、クーラーが低い温度でかかっていることも多いですので、出かける際には一つ羽織るものを持っていくのがおすすめです。寒さから、妊婦さんと赤ちゃんを守ってくれます。
また、クーラーなどに頼らなくてもある程度の暑さなら、服装に気を配ることで涼しく快適な夏を過ごすことができます。
麻や綿といった風通しの良い素材の服装を心がけ、ワンピースなどの通気性の良いフォルムを選んでみるといいでしょう。
除湿モードを上手に使おう
クーラーは、すぐに快適な温度にできますが、長時間利用するとどうしても寒さを感じてしまうものです。そこで活用してほしいのが、エアコンの除湿モードです。
日中一度クーラーで冷やした後、除湿モードに切り替えその温度と快適さを維持することで妊婦さんにやさしい温度調節ができます。
また暑くなってきたらクーラーをつけるといった、小まめなモードの切り替えが冷やさず快適な温度を保つ秘訣です。
除湿モードは電気代もかなり節約できますので、お財布にも優しく一石二鳥です。
強い日差しは避けよう
妊娠初期の妊婦さんにとって、暑い夏の日差しは天敵です。熱中症や脱水症状の原因となってしまいますので、気を付けましょう。
健康づくりのための運動として散歩などをする場合には朝や夕方に行うことをおススメします。
同じく買い物などもこの時間帯に行くよう心がけましょう。妊娠中は、少しだから大丈夫と安易に考えてはいけません。
どうしても日中に外出が必要な場合には、日傘などをうまく活用して、直射日光にはくれぐれも注意しましょう。
食べ物での暑さ対策も取り入れよう
妊娠初期の暑さ対策のためには、新陳代謝を活発にする働きのあるミネラルやビタミンを多く含んだ食材を上手く食事に取り入れましょう。
緑黄色野菜などを豊富にとると、効果的にこれらの栄養素を食事から摂ることができます。
また、乳製品や魚類にも、ビタミンやミネラルがたくさん含まれていますので意識して取るようにしてみるといいでしょう。
他にも、夏の野菜をふんだんに使った食事をすると優しく体温を下げることができます。
トマトやキュウリ、ナスなどの夏野菜を料理に活用してみましょう。できることなら味付けは薄めにし、低カロリーの和食で栄養素を摂ることが理想です。
妊娠初期はこれらの栄養素だけに限らず、バランスの取れた食事をすることが大切ですので、上手く食事メニューを調節してください。
水分補給も忘れずに
妊娠初期は、暑さを感じやすいため妊娠前と違い汗をかくことが多くなります。そんなときに注意しなくてはいけないのが脱水症状です。
おなかに赤ちゃんを抱えた妊婦さんにとっては、命をも奪う危険なものです。脱水症状にならないためにも、こまめに水分を補給するよう心がけましょう。
水分をとるとまた汗をかきますので、体温の調節にもつながります。
ですが、妊婦さんは冷たい飲み物を飲むと体を冷やしますし、胃を荒らしてしまったり、むくみの原因となりますので、常温の飲み物を小分けに取るようにしましょう。
カフェインの入った飲み物や炭酸飲料は妊婦さんにとってあまり良くありませんので、水分補給として飲むのは避けた方がいいでしょう。
きゅうりやレモン、ミントを使ったフレーバーウォーターで、リラックスしながら水分補給も良いでしょう。
頭寒足熱を心がけて
妊娠初期に暑さやほてりを感じている妊婦さんは多いですが、足元だけが冷えると感じる方も少なくありません。女性はもともと冷え性で足や手の先が冷えるという方も多いです。
特に今は妊娠しているわけですから、夏の暑い時期とはいえ、下半身はしっかり保温することが大切です。
レギンスをはいて足首を温かくしたり、おなか周りを冷やさないよう心がけるといいでしょう。
妊娠初期に腹帯をしているという方はまだいませんが、妊娠はじめの大切な時期はおなか周りを冷やさないよう、大きめのトップスなどでおなかをカバーしてくれるものを選んで着用し、保温してあげる工夫をしてみるといいでしょう。
夏バテ気味と感じたら?
いくら暑さ対策をしても、妊娠初期に暑さが続くと、夏バテを起してしまうことがあります。
夏バテになると何も食べたくなくなってしまい、夏バテとはいかなくても食欲が落ち込むことも少なくありません。
赤ちゃんの体を作る大切な妊娠初期ですから、栄養はしっかり摂りたいところです。そんな食欲のないときは、食事をちょっと工夫してみましょう。
ニンニクやしょうが、ミョウガ、しそなどの薬味にも使われる食材を食事に取り入れると、箸が進むことがあります。
また、そうめんなどのつるっと食べられる麺類を取り入れてみるもの良いです。色々な野菜と果物を使ってスムージーを作って飲むのも、栄養がバランスよく摂れるのでおススメです。
ただし、いくら食べやすいからといってさっぱりした食事ばかりしていると、ビタミンやミネラル、たんぱく質などが不足してしまいますので、体調の回復とともに栄養価の高い食材を徐々に取り入れるようにしましょう。
どうしても暑くて脂っこいものを受け付けないというときには、動物性たんぱく質を豊富に摂ることのできる暑い季節でも食べやすい冷しゃぶなどを食事に取り入れてみるといいでしょう。
暑くて眠れない時には?
妊娠初期の不安定な時期に夜眠れないという妊婦さんは多くなります。その上、暑く寝苦しい夜ともなれば、余計に寝たいのに眠れないという日がどうしても増えてしまいます。
良質な睡眠は妊娠初期にはしっかりとっておきたいものです。ここでは暑い夏の快眠法をいくつか挙げてみることにしましょう。
寝室は睡眠に適した温度に
ただでさえ眠ることが難しいという妊娠初期に、寝室が暑いままでは、上手く寝入ることはできません。
就寝するおおよそ1時間前から、寝室のクーラーをつけておくと寝る時間に丁度適温となり、すっと眠りにつくことができます。
頭を冷やそう
熱があるわけではありませんが、頭をアイスノンや冷えピタなどで冷やすことで睡眠も快適なものになります。
ただし、冷たすぎるとかえって目がさえてしまいますので、アイスノンはタオルなどで適温に調節して利用しましょう。
快眠グッズを活用しよう
最近はホームセンターなどでもさまざまな快眠グッズが販売されています。マットレスや枕、シーツなど色々なアイテムがそろっていますので、活用してみましょう。
いくつか使うことで、暑い夏でも良質な睡眠を手に入れることができます。実際に手に取りながら、自分に合うものをじっくりと選んでみましょう。
睡眠前の刺激物は排除しよう
寝る直前までスマフォなどを利用しているという方も増えてきていますが、寝る間際まで脳を刺激していると交感神経が活性化してしまうため、入眠を妨げてしまうことがあります。
運動や入浴も控えた方がいいでしょう。眠る1時間前頃からは、テレビなども消して、脳を休ませてあげることが大切です。
トリプトファンを多く含む食事メニューで快眠を
トリプトファンは睡眠ホルモンであるメラニンの原料となる必須アミノ酸です。たんぱく質に多く含まれており、肉や大豆製品、穀物、乳製品といったなじみの深い食材に含まれています。
バランスのとれた食事メニューにするとより効果的に吸収されるアミノ酸ですので、日ごろの食事から見直してみましょう。
食後すぐは内臓も活発に動きますので、できることなら就寝の2・3時間前までに食事を終えるようにしましょう。
締め付けの少ないパジャマを
体を締め付けてしまうと、ぐっすりと眠ることはできません。ゆったりと、心地よく眠ることのできるパジャマにしてみるだけでも、良質な睡眠をとることができます。
これからおなかも大きくなることですし、ゆったり目のパジャマに変えてみるのもおすすめですよ。
監修:Etuko(産婦人科歴12年)
プロフィール:産婦人科医は「女性の一生の主治医である」と考える医師のもと看護師として12年勤務。述べ18万人の妊婦さんのサポートにあたる。筋肉、骨フェチで体幹バランス運動にて機能訓練をおこなっています。