妊娠中期の卵巣の腫れに注意!良性でも手術が必要な腫瘍と嚢腫

妊娠中期の卵巣の腫れに注意!良性でも手術が必要な腫瘍と嚢腫




自覚症状がないので気がつきにくいですが、実は卵巣は腫れることがあります。

卵巣の腫れは、卵巣腫瘍や卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)などが原因として挙げられますが、良性でも手術が必要になる場合もあります。

妊娠が分かって発見されるケースが多いですが、その多くが経過観察となり、進行具合によっては妊娠中期に手術を行います。

そこで今回は、

・卵巣が腫れるとガンになるの?
・卵巣が腫れるとどんな病気が考えられる?
・妊娠していても卵巣が腫れてたら手術は必要?

といった方に、妊娠中期に気を付けたい卵巣の腫れる原因やその症状、卵巣の病気の種類などを詳しくご説明します。

卵巣が腫れる原因は?

卵巣が腫れる原因は

卵巣が腫れる原因は大きく分けて「腫瘍」「ホルモンの影響」「炎症」の3つです。腫瘍は主に卵巣腫瘍を指しますが、悪性の度合いによって種類が分かれます。

・「卵巣嚢腫」→良性腫瘍
・「境界悪性腫瘍」→良性と悪性の中間
・「卵巣がん」→悪性腫瘍

です。また、腫瘍はできる場所によっても「表層上皮性・間質性腫瘍」「性索間質性腫瘍」「胚細胞腫瘍」と種類が分かれます。

どの種類の腫瘍ができやすいかでいうと、卵巣腫瘍のうち表層上皮・間質腫瘍が75〜80%、性索間質腫瘍が5%、胚細胞性腫瘍が15〜20%ほどの割合となり、このうち80%の腫瘍は良性です。

卵巣の腫れ(原因1):腫瘍の場合

卵巣の腫れ(原因1):腫瘍の場合

ではまず、卵巣の腫れの原因が腫瘍の場合についてご説明します。

卵巣は腫瘍ができやすい

卵巣は排卵するたびに傷つき、そのたびに修復を繰り返しています。そのため、体の中でも一番腫瘍ができやすい箇所といわれています。

ところが、卵巣には痛みを感じる知覚がないため、卵巣で起こる病気は、自覚症状がほとんどあらわれず発見が遅れることが多く、健診や検査で偶然に見つかることも少なくありません

腫れが大きくなっていると、卵巣が腹膜にあたり刺激となって下腹部が痛む場合もありますが、卵巣は2つあるので、片方に異常が生じても、もう片方がその機能を補ってくれるため、病気に気がつきにくいのです。

腫瘍はどうやって発見する?

腫瘍の検査は、内診や超音波検もしくはCTやMRIという方法がとられます。画像診断や血液検査などの複数の検査で、精度を高めながら良性か悪性かを判断します。

腫瘍診断の流れ

1.内診や直腸検査
婦人科での健診時、卵巣に腫大の疑いがある場合に外診や内診、直腸検査とあわせて超音波検査が行われます。

2.画像検査
画像検査の種類はさまざまです。
 ・経膣の超音波検査(婦人科での診察の際に検査可能)
 ・CT検査(周辺臓器への転移やリンパ節への転移の有無を確認)
 ・MRI検査(腫瘍内部の構造や性状、卵巣周辺臓器との関係を把握)
 ・PET検査(CT画像と組み合わせることで画像診断の精度が高まる)

3.腹水細胞診
腹水中のがん細胞の有無を検査。

4.血液検査
腫瘍マーカーが高値を示すかどうかを判定。

腫瘍(悪性・良性とも)とは、体内細胞の一部が異常分裂してしこりとなったものです。その腫瘍が体内にできると、健康なときにはほとんど見られなかった、特殊な物質が腫瘍によって大量に作られて、血液中にあらわれます。この特殊物質を「腫瘍マーカー」といいます。

5.開腹所見
確定診断は、開腹もしくは腹腔鏡手術による病理組織学的な判断によって行われます。

卵巣腫瘍は9割が良性

腫瘍と聞くと悪性の悪いイメージが強いですが、卵巣腫瘍の9割以上は卵巣嚢腫なので「良性」であることがほとんどです。

しかし、嚢腫が大きくなると下腹部を圧迫したり、腹膜を刺激して激しい腹痛や腰痛、頻尿や便秘などの症状がでます。また、卵巣の根元がねじれて起こる「卵巣嚢腫茎捻転 (らんそうのうしゅけいねんてん)」が発症する可能性があります。

卵巣嚢腫茎捻転は、大きくなった卵巣囊腫の重みで卵巣が下がり、靭帯が引き延ばされることで、ねじれが起こり激しい痛みを伴います。

また、嚢腫の大きさによっては、卵巣自体を手術にて摘出しなければいけない可能性もあります。良性の腫瘍ではありますが妊娠中にはリスクの伴う疾患です。

卵巣嚢腫の種類

卵巣腫瘍の多くは良性の卵巣嚢腫です。いくつか種類があるので挙げてみました。

1.漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ)

漿液性嚢腫は表層上皮性・間質性腫瘍の一種です。卵巣の表面を覆う上皮から発生します。漿液(しょうえき)というサラっとした液体が、卵巣の中に溜まって腫瘍となります。

卵巣嚢腫の中でも年代を問わずできやすく、発生頻度がもっとも高いといわれています。

2.粘液性嚢腫

粘液性嚢腫はゼラチン質のネバネバした液体が卵巣の中に溜まってできます。別名で「偽ムチン嚢腫」とも呼ばれます。閉経後に発生することが多い腫瘍です。

3.皮様性嚢腫(成熟嚢胞性奇形腫)

20代〜30代の女性に多い腫瘍で、毛髪や歯など人間の組織が、卵巣にとどまってできます。卵巣の中でできるため、赤ちゃんの臓器だと思われる方も多いですが、卵巣内で細胞が勝手に増殖してしまった結果できあがる嚢胞です。

4. チョコレート嚢胞

チョコレート嚢胞は、子宮内膜症が原因でできる嚢腫です。子宮内膜症は、子宮内組織がお腹の中で飛び散り、その場所で増殖と剥離を繰り返す現象です。

つまり本来起こるはずのない箇所で月経が起きている状態です。その結果、体外に排出されない子宮内膜の組織や血液が卵巣の中に溜まってできるのが、チョコレート嚢胞です。

溜まった組織や血液が変色して、チョコレート色になることからその名前がつきました。卵巣が原因の腫瘍ではないため、卵巣嚢胞とは区別されることもあります。

卵巣膿腫の原因

卵巣膿腫の原因は、卵巣内に水や脂肪分などの分泌物が溜まりできていきます。しかし、実際にはチョコレート嚢胞以外、卵巣嚢腫の原因はよくわかっていません。

一説では、ストレスや交感神経の緊張が、発生原因の要因ではないかとも考えられています。

卵巣は腹部の奥にある臓器なので、良性か悪性なのかをはっきりと診断するためには、手術による摘出で病理検査が必要です。

卵巣嚢腫の症状は?

卵巣嚢腫にはいくつかの種類がありますが、いずれも自覚症状が出ません。嚢腫が小さいうちは、痛みを感じることがほとんどなく、大きさがこぶし大になって気がつくことも多いです。

発見するタイミングも妊娠したことがきっかけで発見されたり、がん検診で見つかることも珍しくありません。

嚢腫が大きくなると生理のときに普段よりも痛みを強く感じたり、生理期間以外での腰痛や腹痛があらわれます。また卵巣内で嚢腫が大きくなっていくので、膀胱や腸を圧迫して頻尿や便秘になります。

嚢腫の大きさが4センチ〜7センチほどで「卵巣嚢腫茎捻転」が起こる可能性がありますが、茎捻転は激痛を伴うだけでなく吐き気・出血・発熱が起こることがあり、ショックで意識を失うこともあります。

ねじれた部位で血行が途絶え、放置すれば卵巣が壊死してしまうため、緊急手術が必要なこともあります。良性であってもあまり軽視することはできません。

卵巣の腫れ(原因2):ホルモンの影響

卵巣の腫れ(原因2):ホルモンの影響

次に、卵巣の腫れの原因がホルモンの影響による場合をご説明します。

ホルモンの影響で卵巣が腫れる?

卵巣が腫れる原因に、ホルモンの影響があります。妊娠初期に分泌される、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの増加により、卵巣が腫れる場合も出てきます。この症状を「ルテイン嚢胞」といいます。

妊娠8週〜10週頃はhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の分泌がピークとなるので、その頃を過ぎると腫れも小さくなっていくことがほとんどです。

だいたい妊娠14週頃には落ち着くことが大半なので、お医者様からも経過を見るようにいわれることが多いです。しかし、この反応も個人差があり、直径7センチほどのしこりになる方もいます。

ルテイン嚢胞が大きくなると、普通の卵巣腫瘍と同じように、破裂や茎捻転を起こす可能性もあります。

このときには激しい痛みを伴うので、場合によっては緊急で手術を行うケースもあります。ただし、このようなケースは非常に稀なので、多くの場合が無症状で経過観察です。

妊娠が分かって健診時に見つかることも多い

ルテイン嚢胞に限りませんが、このような卵巣の腫れは妊娠して初診で見つかることが多いです。発見された「腫れ」が、ルテイン嚢胞なのかそれ以外の腫瘍なのかは、内診や検査で判別はできます。

ですが、ルテイン嚢胞だとしても、それが妊娠がきっかけなのか妊娠以前からあったものか区別が難しく、継続した経過観察が重要です。

卵巣は、腹部の奥にある臓器で知覚細胞もないため、妊婦さんにも自覚症状がなく、病気になっても気がつかないことが多いです。

そのため、気がついたときには症状が進行していて、卵巣を摘出しなければならないケースも少なくありません。

妊娠してから腫れが発見されると、赤ちゃんへのリスクも高まるので、妊娠前からの定期的な検診が重要です。

卵巣の腫れ(原因3):炎症

卵巣の腫れ(原因3):炎症

最後に、炎症による卵巣の腫れについてご説明します。

卵巣の腫れは卵巣炎の可能性が

卵巣炎とは卵巣に炎症が起きている状態のことです。卵巣炎の場合、炎症を起こしているのは卵巣だけのことは少なく、卵管も一緒に炎症を起こしているケースがほとんどです。

卵巣と卵管が炎症を起こしている状態を、総称して「子宮付属器炎」といいます。卵巣炎が起こる原因は、クラミジアや淋菌、大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌、結核菌など、大半が細菌による感染です。

しかし、疲れが溜まっていたり体調不良など、免疫力や抵抗力が落ちているときは、膣の自浄作用が弱まっているため感染しやすくなります。

卵巣炎になると、まず細菌抵抗の弱い卵管で炎症が起こり、その後卵巣に炎症が広がるパターンが多いです。

卵巣炎の症状は?

卵巣炎になると、おりものが黄色っぽくなり量が増えます。他には下腹部が痛むことや腰痛、不正出血などの症状があらわれます。

症状が悪化しているときには、吐き気や嘔吐、高熱が出ることもあります。卵巣炎の厄介なところは、炎症が治ると症状が軽減するため受診するタイミングを逃し、卵巣炎が慢性化してしまうことです。

卵巣の腫れにはどんな治療が必要?

卵巣の腫れにはどんな治療が必要

妊娠前の方は不妊の原因となるため、早期の治療と完治を目指すことが大事です。妊娠している場合の治療はどうするのでしょう。

腫瘍や嚢腫が見つかった場合

腫瘍や嚢腫の場合、治療方法は基本的に手術となります。現在では開腹手術以外にも、嚢腫だけをくり抜き体への負担が少ない腹腔鏡手術も可能になりました。

卵巣を嚢腫部分だけ切除するか全摘出となるかは、嚢腫の大きさや状態、患者さんの年齢や希望などを考慮します。

卵巣炎の治療の場合

卵巣炎の治療は、主に抗生物質や炎症を抑えるための消炎剤で行われます。ですが、妊婦さんには抗生物質での治療が行えないので、感染しないように予防するしかありません

また細菌は感染は流産や早産のリスクを高めるほか、出産時に赤ちゃんが肺炎や結膜炎を発症する恐れもあります。母子の命に関わる危険性もあるので、予防に努めウイルスに感染しないよう注意しましょう。

卵巣の腫れは経過観察が重要

卵巣の腫れは経過観察が重要

このように妊娠がきっかけで、卵巣に異常が見つかることは非常に多くあります。腫れの種類にもよりますが、腫瘍の場合でも良性であるケースが9割なので、妊娠初期に見つかった卵巣の腫れは「経過観察」が非常に重要となります。

医師の判断にもよりますが多くの場合3ヶ月くらいは様子を見ることが多いです。腫瘍や嚢胞が良性であれば、そのまま妊娠を継続し問題がなければ、予定日内で自然分娩することも可能です。

また、ルテイン嚢胞のような一過性の腫れは、妊娠週数が進めば自然と治癒されるものもあります。

経過観察中、腫れが肥大したり悪化して妊娠を継続できない場合や、母体にリスクが伴うときには、手術により卵巣を摘出したり、早産で帝王切開を行うなどの処置を行うこともあります。

よって、妊娠初期に見つかった異常でも、妊娠中期に手術を行う可能性は大いにあります。

卵巣のトラブルはどのくらいの頻度で発生する?

卵巣のトラブルは自覚症状がないために「もしかして・・・」という不安もありますが、妊婦さんが卵巣腫瘍を合併する頻度は約1%ほどです。

また、発見される卵巣腫瘍もその9割が良性で、治療の必要もないといわれます。

ただ、悪性の腫瘍が発見される頻度は稀ではありますが、ケースとしては約5,000〜20,000分娩に1の頻度では起こり、まったくのゼロではないので注意は必要です。

また、妊娠中の卵巣腫瘍で起こる茎捻転も9〜19%の頻度で発生し、破裂も3%の頻度で起こります。

妊娠中でも手術は行う?

卵巣腫瘍が良性で、大きさが5〜6センチほどまでは経過観察となることもありますが、腫瘍の状態や出産への影響などによっては摘出手術を行う可能性はあります。また、それ以上の大きさになると原則手術処置が行われます。

茎捻転が起こった場合には、妊娠週数を問わず手術の対象です。手術の時期は安定期に入る14〜15週以降が望ましいとされているので、多くは妊娠中期のはじめに行われることが多いです。

妊娠後期になると、赤ちゃんが成長している子宮内での操作が難しくなるため、出産後の治療となります。

卵巣腫瘍があることで流産や早産、分娩障害が起こる可能性もあるため、やはり妊娠前の早期発見と経過観察が非常に重要となります。

定期検診が何よりの予防

定期検診が何よりの予防

卵巣の腫れやトラブルは、自覚症状があらわれないだけに放置している可能性が高いです。

最近は子宮がん検診のときに卵巣の腫れも触診してもらえることがあるので、日頃から定期検診を受けることがとても大切です。

妊娠前に発見できていれば、薬で治る疾患もあるので早期発見のためにも定期的に婦人科を受診しましょう。

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